第297話 アーサー家襲撃

 ーーアーサー家宅

 そこには現在、アーサーの姓を受けた者たちが静かに眠りについていた。そこを密かに狙う者たちがいた。


「アポレオン様、全員配置に着きました」


「そうか。ではグレイムの指示の下、襲撃を開始しろ。それともう一度だけ伝えておくが、だけは生かしておけよ」


「承知」


 全身黒い服を身に纏い、夜に姿を包み隠している謎の集団。彼らは今アーサー家の家を完全に包囲していた。

 逃げ場はなし。全方位を囲まれていた。


「では第一部隊は家の裏戸から、第二部隊は正面玄関から家の中へ突撃しろ。残りの部隊は家の外で厳重に警戒せよ」


 グレイムらには緊張が流れる。

 だが今は眠っているであろう真夜中、一つの部隊二十人で構成された部隊が二つ家へ入るーーその瞬間、彼らは何者かの攻撃を受けアーサー家の家から吹き飛ばされた。

 玄関と裏戸にはそれぞれ何者かが立っていた。


「ここは何の一族の家か分かっているのか?」


「我々の家に一歩でもその汚い足を踏み入れるんじゃねー」


「「お前らは全員、皆殺しだ」」


 ポイズン=アーサー、並びにグリム=アーサーは襲撃者を迎撃した。


「やはり気付かれていたか。第三部隊から第十二部隊までは戦闘を開始せよ。残りの部隊は引き続き家の周囲を包囲せよ」


 ポイズンは剣を握り、グリムは銃を構える。

 敵の数はおよそ五百、それほどの数に囲まれていることに気付き、二人は大きなため息を吐いた。


「面倒だけどーー」


 グリムへ襲いかかる一人の暗殺者。しかし彼が振るったナイフをかわし、こめかみへ弾丸を撃ち込んだ。


「ーー一人残らず額に穴開けてやるから来な」


 ポイズンへは五人ほどの暗殺者が刀を持ち、一斉に襲いかかる。だがポイズンは正面から吠えるようにして剣を振るう。暗殺者の刀は粉々に折れ、暗殺者は一瞬で倒された。


「家族には手出しはさせねーぞ。部外者ども」


 ポイズンは剣に毒を纏わせ、暗殺者らへ向けて言い放った。


 それを遠目に見ていたグレイムは、他の場所から他の家族が逃げないかを監視していた。

 そこへ、アポレオンが火炎を纏いながら降りてきた。


「グレイム、部隊を三つほど借りていくよ」


「ええ。構いませんが、何をするおつもりですか?」


「アーサーが戻ってきた。俺は奴の足止めをするから、それまでに一人くらいは殺しておいてくれよ。でなきゃ、こんな真夜中にこれほどの兵を動かした意味がなくなるからな」


「分かりました。お任せください」


 グレイムが意気揚々と言ったと同時、アポレオンは三つの部隊を率いてその場を離れた。

 戦況は変わらず、圧倒的な力に暗殺者らは次々とやられていき、気付けば二百名が倒されていた。


「これが……アーサー家の力か」


 グレイムは驚きを隠せない。

 対抗する策もなく、無意味に兵を死なせていた。


「俺が直々行くしかないか」


 グレイムは両手に短剣を握り、ポイズンへと襲いかかった。だが既に目の前からポイズンは消えていた。


「君が指揮官だね。じゃあ、これで終了だ」


 グレイムの体からは血が吹き出した。グレイムはそのまま意識を失っていき、その場へ横たわった。

 圧倒的な力を見せたポイズンに、グレイムはなす術なく倒された。それによって統率力を失った暗殺者らを、グリムとポイズンは次々と倒していった。

 一瞬で全滅させられた。


「グリム、寝るぞ」


「ようやく寝れますね」


 二人は家へ戻り、眠りにつく。

 その頃、そこから離れた建設中の巨大なビルがある場所で、鉄骨の上にイージスは立っていた。その前にアポレオンは兵を率いて降り立った。


「イージス、君さえ殺せばーー」


「ーー良かった。相手が君で。君は弱いから、だからごめんね」


 イージスへ向け、アポレオンは火炎を纏う剣を遠距離で振るう。剣が振るわれたことにより、火炎の波がイージスへ向けて放たれた。

 だがその火炎は、巨大な水の壁が創造されていた。その壁により、火炎の一撃は防がれた。


「俺さ、最近調べてみたんだよ。もしかしたら『鍵』全員が違う能力を有しているんじゃないかって。それで分かったことがあるんだ。

 アニーの『鍵』は魔力を増幅させるという力、スフィアの『鍵』は水魔法全ての圧倒的強化、ルクスリアはまだ不明だけど、シャリオは攻撃魔法と防御魔法の圧倒的強化なんだ。そして今、俺はシャリオの『鍵』を開いている」


「攻撃と防御の強化……。それがどうした。強化されたところでーー」


 直後、アポレオンが率いた暗殺者は全員閃光の一撃によって地に倒れた。アポレオンには何が起きたのか理解できていなかった。


「光属性魔法はとにかく速い。そしてその攻撃力は倍増される。ただ単に、そこら辺にいた君の仲間を全員光の攻撃魔法で倒しただけさ。次は君さ」


 アポレオンは自身の周囲に火炎の壁を形成する。だが、それら全てが光の剣によって貫かれた。火炎の壁は意味をなさない。


「終わりにしよう。アポレオン。家族を襲ったその大罪、徹底的にあがなわせてやる」

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