第293話 アーラシュの覚醒
魔法鎖国島では、ペルシャがイーロンと戦いを繰り広げていた。
イーロンの放つ光線がペルシャへと向かう。迎撃するようにペルシャは矢を放つが、軌道が不自然な無数の光線がペルシャへと向かう。
「無駄だ。弱者は蹂躙されるだけだ」
時計塔の上に立つペルシャ、そこへ目掛けて光線は直撃した。瓦礫は周囲へ錯乱し、時計塔からは煙が吹き出る。
港にて、上陸しようとするモンスターを食い止めるブレイバー兵長は時計塔が破壊されたことに驚きを抱く。
「ペルシャ」
時計塔は崩れ、砕けた時計塔の瓦礫が下の街へと落下する。
煙に覆われた時計塔は徐々に晴れ、そこから一人の女性が姿を見せていた。
「ペルシャ、生きていたか」
イーロンは再び光線をペルシャへと放つ。
ペルシャは光線を矢で撃ち落とし続けるも、さすがに数が多く速度も速く、その上軌道も読めないとなれば落とせるはずもない。
足場は崩れ、ペルシャは落ちる。浮遊魔法も覚えていないペルシャは自由落下の法則にしがたって落ちる。そんな彼女へイーロンはとどめの光線を放つ。
「さようなら」
「ごめん。私にはこの島を護れない……」
「座標転移」
ペルシャの側に一人の男は現れた。彼は無数の光線へ向け、体勢が不自由な状況で無数の矢を放つ。それらは全ての光線を撃ち抜いた。
「こんな芸当ができるのは……」
「ペルシャ。よく持ちこたえてくれた。後は俺に任せろ」
ペルシャを抱き抱え、彼はイーロンへ鋭い視線を送る。その目には怒りが込められている。
「来たか。アーラシュ」
アーラシュはペルシャを降ろすと、弓を手にしてイーロンへと足を進める。
その一歩一歩に殺意と怒りが込められている。イーロンはそれを嘲笑うかのように、光線を次々と浴びせる。
「座標転移」
しかし不思議なことに、イーロンの放った光線は全てイーロンへと直撃した。
ーーおかしなことだ。
イーロンはアーラシュの瞳を見て、背筋が凍るように震え上がった。
「その目……何だその目は」
その目に込められた殺意は生易しいなものなどではなかった。それは容赦せずに殺すという殺意の表れであった。
この時、イーロンは後悔した。己が犯した過ちに。
アーラシュは周囲に矢をばらまいた。
「座標転移」
転がった矢は全てイーロンの体へと直撃した。
「黄龍、奴を喰らえ」
黄龍は叫びながらアーラシュへと突撃をする。
巨大な体を持つ龍の突進に対し、アーラシュは全く怖じ気づくことなく黄龍へ視線を向けた。
「座標転移」
黄龍の首もとには、一際大きな巨大な矢が突き刺さる。その矢は地面をも貫き、黄龍の動きを一瞬で封じた。
「封印され、解き放たれ、魔法牢獄へ閉じ込められ、脱け出した。だがその全てが今無意味になる。俺の故郷を襲った罪、あがなってもらおうか」
アーラシュはイーロンへ視線を向けた。
「おかしいだろ。お前、そんなに強くなかったはずだろ」
「限界を越えただけだ」
イーロンはアーラシュへ脅えていた。
イーロンが目の前にいるアーラシュばかりに気を取られている最中、アーラシュは言う。
「残念ながら俺だけじゃない」
イーロンの背後から六本の矢がイーロンを貫く。イーロンは血を吐き、意識を朦朧とさせた。
背後には六芒星の面々が弓を構えてそこに立っていた。
「何で……また負けるのか……私は…………」
「二度と目覚めるな。イーロン=センター」
アーラシュはイーロンの額目掛け、矢を放つ。矢は見事にイーロンの額へ的中し、そしてイーロンは黄龍の背中へと落ちていく。
「決着はついたな。とこしえに眠るが良い」
アーラシュは特大大きな矢を三本、黄龍とイーロンの頭上に出現させた。それらを落とし、黄龍とイーロンの全身を粉々に砕いた。
黄龍とイーロンは倒された。アーラシュの圧倒的力によって。
「ペルシャ、大丈夫か?」
「ありがとう。アーラシュ」
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