第292話 紅碧島での一幕
倒れるアーラシュの前には、電雷の不死鳥とあだ名されたギン=クロノコフィンが電撃を纏って佇んでいた。
彼は倒れるアーラシュへと手をかざしている。
六芒星の六人はギンへと矢を放つも、まるで体が雷電そのものかのように矢は貫通し、刺さらない。
「無駄だよ。さっきまで固有魔法を使っていない状態と、今固有魔法を使っている状態の我とでは話にならん」
先ほどまで当てられていたはずの矢が、今のギンには一発も当たらない。その全てが貫通し、突き抜ける。
当たらない、全てが当たらない。
「さよならを告げよう。君という存在に」
ギンは手から電撃を放つ。それはアーラシュを襲うーーその寸前、電撃を斬り裂き、彼女は水を纏って現れる。
「お前は我の邪魔をするのか。水の姫アリシア」
「すまんな。この島は私の生まれ故郷なんだ。お前なんかが足を踏み入れること事態愚の骨頂。死んでもらうぞ」
アリシアは倒れているアーラシュや紅眼族族長プロミネンスや碧眼族族長クリスタルらを見て、ギンへと憤りを込めた鋭い視線を向けた。
彼女は水を纏い、ギンへと斬りかかる。
「我に攻撃はーーぐはっ」
アリシアの剣の一振りがギンの体へ傷をつけた。攻撃が通るはずのないギンは攻撃を受けたことに衝撃を受けているようだった。
今の彼は全ての攻撃を通さないはずなのに。
傷へ触れながら驚くギンへ、アリシアは水を纏っている剣を向けながら言う。
「私がなぜ水の姫と呼ばれているか、そしてそこまで強いはずのない水魔法でなぜ私がこれまで生き残ってきたか。その答えは私が持つ固有魔法にある」
「何だそれは」
「私の水は全ての魔法を斬り裂くんだよ。たとえそれがどんな魔法であれだ。つまりはさ、お前が使っている体を雷電に変える魔法を斬り裂いた。つまりその先にある生身の体を斬ることができるというわけさ」
「それが……水の姫たる
「まあ私には色々伝説はあるけどさ。そんな私と戦おうとした時点で君の敗北は決した」
アリシアの目は青く輝いている。
「ふざけるな」
ギンは両腕に電撃を纏わせ、アリシアへと斬りかかる。アリシアはその攻撃を剣で受け止めた。
「こいつは私が相手をする。だから、」
アーラシュへ視線を移し、アリシアは言う。
「行かなきゃいけない場所があるんだろ。私も同じ思いだよ。故郷を護りたいという気持ちは、正義の魔法使いならば誰にでもあるだろ。だから行ってこい、アーラシュ」
アーラシュはボロボロの体で立ち上がった。
「なぜ……あんなに攻撃を浴びせたはずなのに」
「理屈じゃねーんだよ。私たち魔法使いには理屈なんて曖昧なものは通用しない。限界なんてとっくに越えてしまうのさ」
「そう簡単に限界を越えられるものか」
「間単に、じゃないさ。ただ奴が護りたいという気持ちが奴自身の限界を越えさせた。かっこいいじゃねーか。そういうのが、魔法使いっていうものだろ」
「どうでもいいね。そんなの」
ギンは力づくでアリシアを倒そうとするも、貧弱ではないアリシアの力に圧倒されていた。
その隙にアーラシュと六芒星は魔法鎖国島へと向かう。
「護れよ。ちゃんと」
「よそ見をするな」
ギンはアリシアの顔へ蹴りを入れた。しかしその蹴りは彼女が纏う水によって防がれる。
「水の攻撃に水の防御か。水の姫、厄介だな」
「その台詞、勝てる見込みがある奴がいう台詞だ。だが残念ながら、お前が私に勝てる確率はゼロパーセント。諦めな。既に敗北は決まっている」
「くそぉぉぉぉぉおお」
ギンは勢い良くアリシアへ襲いかかる。しかし次の瞬間、ギンの全身は無数の斬り跡によって血が噴き出す。膝を地に打ち付け、そして横たわる。
一瞬の攻撃、それによりギンは敗北を期す。
「これが……水の……姫」
「さようなら。これが私の故郷を襲った罰だ」
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