第288話 ゼウシアの陰謀
既に魔法城は名士四十一魔法師によって攻略されつつあった。しかし無数のモンスターにより、容易く魔法城へは入れない。
攻防は激化していくばかり。
名士四十一魔法師などの名のある魔法使いに侵入を許されても尚、〈魔法師〉は焦ってはいなかった。それどころか、この状況に喜んでいるようにも思えた。
「ヘラヘラ、それってどういう意味?」
「枯雪島、そこに古代遺跡の形跡があるっていうのは知っているであろう」
「ええ」
「ゼウシアはの、その古代遺跡に栄えた古代文明そのものを復活させようとしておるのだ。それも、その時代に生きていた全ての者を甦らせて」
「そ、そんなことを……。どれほどの魔力があろうと、そんな魔法、存在するはずがない」
「お主はまだ入りたてで何も知らぬだろうから教えてやろう。ゼウシアはな、私たちの何倍もの時間を生きているのじゃ。百年、二百年、三百年、いいや、それ以上。かつて滅んだその世界に、彼はいたのじゃ」
「ゼウシアは本気で……」
「〈魔法師〉を作り、『鍵』を集めた時点で彼は本気じゃったよ。もう彼は止められないぞ。世界を滅ぼすその日までな」
ヘラヘラは魔法城の中、冷静にも笑みを浮かべながら刻々と語っていた。それが嘘であれ真実であれ、その事柄が大きなことであるとイリスは分かっていた。
かつての文明を、世界を甦らせる。それはつまり、過去からの反逆。今を壊そうとしているのだろう。
「イリス、もうすぐ敵が来るじゃろう。後は七罪人に任せ、すぐに魔法城から撤退しようぞ」
ヘラヘラが出口へと足を進めたその時、剣の一撃が壁を粉砕した。そこから姿を現したのは、英雄剣ヘラ・クレスを握るヘラクレスの姿が。
彼は全身にモンスターの血を浴びていた。
「英雄か。七罪人は何をしている」
「安心しろ。七罪人なら今頃、他の名士四十一魔法師によって倒されてるだろうよ」
勇ましくヘラクレスは言い、剣を掲げる。
「お前の相手は俺だ。他の奴に邪魔はさせない。ゼウシアの次に厄介な重要人物、夜の女王ーーヘラヘラ=ナイトクイーン。貴様は俺が直々に手を下してやる」
ヘラクレスはヘラヘラへと襲いかかる。しかしその一撃を、閃光を纏った剣が防ぐ。
「ちっ。七罪人か」
「ヘラヘラ、遅れた、ごめんね」
そこへエイリアン=ライターとともに姿を現したのは、七罪人の一人ーーフラッシュであった。彼女は閃光を纏う剣を振るい、ヘラクレスへと太刀を浴びせる。
だがヘラクレスは強く、光の速さの攻撃を全てかわしている。
「これが、英雄」
「英雄にはかなわない。俺は英雄だからな」
「さあ、それはどうかな」
その声がしたのはヘラクレスの背後、
ーー振り向いた時は時既に遅し。そこにいたティアマティアの蹴りがヘラクレスの頭部へと直撃し、足場を粉砕しながら魔法城の地下深くへと落ちていった。
「さて、ティアマティア、お主が来たということは、転移の準備はできたということじゃな」
「大正解。転移部屋へ向かってくれ。私は後で行くから。私専用の
「誰のことか分からぬが、返り討ちにはされぬなよ」
「相手は子供ですから、わらわにはかないません」
「そうだと良いがな」
その一言を残し、ヘラヘラはイリス、エイリアン、フラッシュを率いて転移部屋へと移動する。そしてティアマティアは、ヘラクレスの落下によって空いた穴から地下へ行く。
「あの子供たちに英雄ヘラクレスか。接戦にはなるだろうけど、勝たせてもらうよ。お前たち」
ティアマティアは青髪のツインテールを激しく揺らし、蛇のような鋭い目付きで地下を睨む。
「やはり生きているか。それも無傷で」
ティアマティアの視界には、無傷で剣を頭上にいるティアマティアへと向けるヘラクレスの姿が映っていた。
「不滅の英雄。今度こそお前を終わらせてやるよ」
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