第284話 絶対的唯一神と三分の一の魔聖
トールたちが一斉に魔法船を襲撃した際、イージスやアニーたちの乗る魔法船にも襲撃者が現れていた。その魔法船には三名の名士四十一魔法師とアリシア、そしてノーレンス聖が乗り合わせていた。
襲撃者を迎え撃つため、名士四十一魔法師の二人とノーレンス聖が魔法船の外へと向かった。
緊張感が漂う中で、イージスも戦闘に備えるため、魔方陣から剣を取り出したーー夕焼けの剣、その剣は夕焼けのごとく輝きを放っていた。
「アリシア先生、これほどの戦力がいるのです。当然勝てますよね」
「ああ。万が一にも負けることはない。ただ……これほどの魔法使いが一斉に〈魔法師〉の根城を叩く。それをなぜ彼らは迎え撃つのか、見当がつかない」
「魔法城に侵入させたくないからじゃないですか」
「むしろ彼らにとって、魔法城での戦闘が良いはずだ。だが彼らは魔法城で仕掛けず、わざわざ何もないただの海の上で襲撃。他に意図が……」
アリシアが考えていると、魔法船は激しく揺れた。
魔法船で戦っているノーレンスたちの影響だろう。中からではどちらが優勢かも分からず、不安が募るばかり。そこで大きな爆発音が響く。
「ノーレンス聖は大丈夫でしょうか……」
「ああ。奴は魔法聖だからな、心配する必要はないさ。君たちは魔法城へ着くまで力を温存しておけ」
イージス、アニー、スフィア、シャリオ、そしてルクスリア、彼女らは魔法船が魔法城へ着くのを刻一刻と待っている。
その頃、その魔法船の外ではノーレンスと二名の名士四十一魔法師が戦っていた。
「相手は貴様か。元名士四十一魔法師の一人、嫉妬へ落ちた大罪人、フラッシュ=インウィディア」
黄金色の艶やかな髪をした女性ーーフラッシュは黄金色の剣を握りしめ、ノーレンスへと剣を振りかざす。
「接近戦か。だが無駄だよ」
フラッシュの剣がノーレンスへ届く直前、一筋の雷光がフラッシュへ駆け抜けた。腹を貫く雷光、その一撃にフラッシュは体を浮かせ、そして船上を転がる。
「魔法聖に、君は勝てない」
「ははっ。確かにそうだ。だがな、お前との戦いの本命は私じゃないんだよ。本命はもっと上だ」
突如、空を暗雲が覆う。
その瞬間、ノーレンスはある人物の気配を感じ、そして呟く。
「来たか。ゼウシア」
ノーレンスの頭上には、ゼウシアが電撃を纏う剣を握り、立っていた。
ゼウシアの登場に、ノーレンスは冷や汗を流す。
「ノーレンス聖、この戦いであなたを終わらせる」
「それは無理だ。私は魔法聖だからな」
ノーレンスは頭上にいるゼウシアへ向け手をかざす。
「忘れたか、ノーレンス。お前は一度俺に敗北している。同じことは何度も繰り返される。また負けるぞ」
「ああ。そうだな」
「肯定か。驚いたな」
「今の私ではお前に勝つことは不可能だろうな。だからといって、お前を見逃せばこれから魔法城へ乗り込もうとする仲間たちがお前によって倒される」
「君たちは弱い。だから終わるのだよーー」
「ーーだから、だから私はここお前を捕らえるために来たんだよ」
ノーレンスは笑みを見せる。
「お前が俺を止められるわけないだろ」
ゼウシアは剣を握りしめ、ノーレンスへと降下する。だがノーレンスは一歩も動かず、ゼウシアへ手を向けたまま動かない。
それに違和感を感じつつも、ゼウシアはノーレンスへ向けて飛び進める。そして剣をノーレンスへ向けて振り下ろすーーその瞬間に、ノーレンスは叫んだ。
「開け、魔法牢獄の扉よ」
「まさか……」
ノーレンスとゼウシアの間には、巨大な漆黒が駆け抜け、それとともに鎖が周囲を駆け抜けた。鎖の音が響き渡り、ゼウシアとノーレンスだけ突如全く違う世界へと移動させられていた。
そこがノーレンスの創造した魔法牢獄、いわばノーレンスの固有結界、そこにはこれまで多くの罪人が囚われてきた。
「なるほど。これで君たちにとって最も厄介な敵、この俺を捕らえたか」
「ああ。しばらくここで時を刻もう。我が結界の中で」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます