第283話 真昼の孤海
魔法船は海を駆け抜け、空を泳ぎ、魔法城へ一直線に進んでいた。
魔法石を原動力として進む魔法船は、魔法石に込められた魔力が消失しない限りは落ちることはない。もしそれ以外の理由で落ちるとするならば、それはーー
「さあ始めるぞ。イシス、ティアマティア。無理に攻撃を仕掛ける必要はない。ただの陽動だ」
「とはいっても、相手は魔法聖三人に名のある魔法使いばかり。陽動と言っても難しいと思うけど」
「それに関しては問題ない。この日のために、『鍵』を集め、ゼウシア様は封印を解いているからな」
トール=ライデン、イシス=アーティファクト、ティアマティア=ソフィアの背後からは、六名の大罪人が姿を現す。
「久しぶりの外の世界ナノ。凄く楽しみナノ」
「本当だぜ。まじ久しぶりすぎてテンション最高潮、群青、頂上、廃工場」
「うるさいな。相変わらず。まあてめえのつまらないラップが聞けているってことは、またこの世界に蘇ったってことなんだよな。にしても気持ち悪い感覚だよ。死んだはずなのになぜか生きている。本当に、気持ち悪い」
「そんなこと言っても仕方ないじゃん。とりま、奴らをボコせば良いんでしょ。ならとっとよボコそうよ。久しぶりの戦いにゃんだしさ」
「ペイン、お前しくじったんだってな」
「黙れフラッシュ。あまり敵を舐めない方が良いぞ。でなきゃ後悔する」
六名の魔法使いの登場に、イシスとティアマティアは嫌悪感を露にする。
「トール」
「利用できる駒は最大限利用する。それがゼウシア様の御意向だ」
「まあ私たちに対して敵対行動さえ取らなければいいけどさ」
「大丈夫だ。奴らは魔法聖に恨みを持っている。むしろ利用しやすい」
トールは悪魔的に笑みを浮かべる。
利用するだけの駒のようにトールは六名の魔法使いへ視線を送る。
「では攻撃を仕掛けるぞ」
トールが雷鎚を無数の魔法船へと向けるとともに、六名の魔法使いは一斉にそれぞれ別々の魔法船へと飛び込んだ。
そこにある魔法船は十五ほど、それぞれの魔法船には火の手が上がる。
「ティアマティア、イシス、我々も行くぞ」
トールは雷鎚を握りしめ、魔法船目掛けて飛び込んだ。そこでイシス、ティアマティア、トールは別行動となる。
トールが降り立った魔法船、そこには襲撃を想定していたのか、名士四十一魔法師の一人、カルナが立っていた。
「カルナ=サン。お前が相手か。外れだな」
「ゼロ、カノン、二人は下がっていなさい。彼の相手は私一人の方が良い」
その指示通り、二人はカルナから距離を取った。
それを確認すると、カルナは自身の背後に巨大な太陽を出現させる。その太陽はトールのみに熱を与える。
「さすがは"万能の知恵"と称されただけはあって、凄い魔法だな。それ」
「ああ。私は創造した固有魔法の中でも、上位に君臨するだろう。さあ、始めるよ」
雷と太陽が魔法船の上で激突する。
その頃、別の魔法船にイシスが降りた。そこでもトールの時と同様に、既に二人の魔法使いが待ち構えていた。
「ヒミコ=アマノカミ、そしてギルヒメシュ=ウルク。君たち二人が相手か。なら最初から全力でいかせていただく」
イシスは全身に水と冷気を纏い、名士四十一魔法師の二人を前に退けを取ることはない。
「水氷の皇女、そう呼ばれた私の実力、とくとご覧あれ」
別の魔法船では、ティアマティアが産み出した数体のモンスターを魔法船へ激突させ、その魔法船内を混乱させようとしていた。だが生憎、ここに弱者は一人もいない。いるのは戦闘と経験を積んだ強き者のみ。
暴れていたモンスターはすぐに討伐され、そしてそれらのモンスターを倒した魔法使いを見て、ティアマティアは落胆する。
「君か。"不滅の英雄"ヘラクレス」
「ティアマティア、モンスターの母親か。お前の相手は俺だ」
「はいはい。相手してあげるから、あまり調子にのるなよ」
ティアマティアの殺気を纏った鋭い視線がヘラクレスへ向けられる。それに返すように、ヘラクレスは剣を向けた。
「ここがお前の墓場だよ」
そして残りの六名の魔法使い、その内の一人ーーペインが仲間のエリアとともに降り立った魔法船、そこには忍がクナイを手にし、待ち構えていた。
まるで飢えている猛獣の如く、その者の殺意は激しく伝わっていた。
「炎上島以来だな。ハンゾウくん」
「今すぐ貴様をここで倒す。とっとと始めようか、ペイン」
魔法忍聖ーーハンゾウ=カグラーー名士四十一魔法師の一人。
炎上島での一件以来、ハンゾウはペインを取り逃がしたことへ未練を抱いていた。だがその未練が今晴らされる時、
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