第280話 彼女は巨人となった

 花枯れ王女はカノンへと手をかざす。その瞬間、カノンは何かを悟り、すぐさま盾の魔法具を構えた。すると花枯れ王女は笑みを浮かべ、手を下ろした。


「私を警戒しているのかな?生憎、私は無差別に木を枯れさせることしかできない」


「なるほど。はったりだったというわけか。まんまと騙されたよ」


 そこで気づいた。

 花枯れ王女の隣にいたはずの狼がいなくなっていることに。


「まさかーー」


「そのまさかさ」


 カノンの横から勢いよく走ってきた白丸は、鋭い牙でカノンへと噛みついた。カノンは腕を犠牲に白丸の攻撃をかばった。盾は落ち、そこで花枯れ王女は手をかざす。


「やはり何か能力が……」


 カノンは花枯れ王女の意識を集中させつつ、腕に噛みついた白丸をなぎ払う。落ちた盾を拾った瞬間、背後より打撃を受けた。

 地を転がり、倒れるカノン。振り向けば、そこには拳を構えるゴブリンたちの姿が。


「グリン、ミドリ。サンキュー」


 ゴブリンのグリンとペットはそこにはいた。


「ゴブリン……。弱小モンスターがっ」


 カノンは両手に剣を構え、二匹のゴブリンへと足を進めた。大地を疾走するカノンへゴブリンは拳を構える。


「迎え撃つか。俺に勝てるはずが……って」


 突如月光が何かに妨げられ、地面に映った影でカノンは気づいた。


「きょ……巨人!?」


 見上げれば、そこには十メートルはあるであろう巨人がカノンを踏み潰すように足を下ろしていた。避けることもかなわず、カノンは巨人の下敷きとなる。

 なんとか盾で防いだものの、巨人の足の下敷きから抜け出すことはできずにいた。


「童話島を舐めるなよ」


 花枯れ王女は勝ち誇ったかのような笑みを浮かべ、腕を組んで枯れた吸血樹を踏みつけて言った。

 カノンは巨人の下敷きから逃れることができず、冷や汗を流す。

 このままでは確実に殺される。


大連だいれん、そのままこいつを踏み潰していろ」


「ああ、分かった」


 巨人、大連はカノンを踏みつける強さを強めた。


「こうなったら、仕方かい」


 真夜中、月光よりも輝く光が巨人の足から放たれた。その光は巨人の足を貫いた。

 大連は体勢を崩し、その巨体を枯れた木々へと打ち付けた。

 巨人の足場から出てきたのは、巨大なレーザー砲を構えているカノン。


「この魔法具は魔力の消耗が激しいから使いたくなかったけど、仕方ないだろ。このままじゃ殺されてしまうのだから」


 カノンはレーザー砲を花枯れ王女へと向けた。

 白丸は花枯れ王女へと走るも、


「間に合わない」


 無防備な花枯れ王女へ、レーザー砲の一撃が放たれた。

 大地は焼け焦げ、木々は燃え、炎煙が立ち上る。超高温のレーザー砲の一撃によってか、花枯れ王女の姿が見えない。


「まさかレーザー砲の餌食に……」


「だろうな。このレーザー砲の一撃をまともに受ければ残骸すら残さず消える。君たちの敗北だよ」


 カノンは勝ち誇り、おごり高ぶる。

 傲慢な振る舞いをするカノンのレーザー砲へ、氷の欠片が飛んできた。レーザー砲は凍てつき、さらには氷の欠片の直撃を受け、レーザー砲は砕けた。


「何!?」


「脆いじゃないか。それが君の奥の手だろ」


 声がした方へカノンは視線を向けた。

 そこには、花枯れ王女を抱えているアニーの姿があった。


「お前が花枯れ王女を助けたのか」


「正解。それよりもさ、この事件の主犯は君だろ。だから私は全力で君を倒そう」


 アニーは全身に電撃を纏った。


「魔法具はまだある。こうなったら逃亡用の魔法具でーー」


 カノンはふとアニーへと視線を移した。その瞬間、この島へ来たことへ後悔していた。

 アニーが纏っていた電撃はみるみる膨張していき、やがてはまるでアニーの纏う電撃は巨人のようの大きくなった。


「〈雷巨人イエロークレイモア〉。私は『鍵』、膨大な魔力を有する。それ故、私は巨人になった」


 アニーは電撃の巨腕をカノン目掛けて振り下ろす。

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