第269話 〈魔法師〉の襲撃
突如、ここ炎上島の海辺に現れた三人の人影。その内の一人は一瞬にして海岸まで移動していた。なぜか電気を纏って。
その人物はローブを被っていたが、すぐにそれを脱ぎ捨てた。そして彼の正体が露となった。
電気を纏い、まるで雷のような色の瞳をしていた。彼の手には電撃を纏う巨大なハンマーが握られている。
「あれは……〈魔法師〉の一人、トール=ライデンが持っていると言われている
「ーー正解。俺がトールだ」
エリアを捕らえているアニー、その前には雷鎚を握るトールの姿が。雷鎚のひと振りに、アニーは吹き飛ばされて屋根を転がる。屋根瓦が見事に地へと落ちる中、アニーは瞬間移動をしてなんとか体勢を立て直した。
「トール。なぜここに……。早く父上に伝えなければ」
アニーは転移によりノーレンスのもとへと移動した。
アニーが転移した頃には、ペインは縄で縛られ、身動きが取れないようになっていた。
「父上、〈魔法師〉が、三人この島に現れました」
「〈魔法師〉が三人!?」
「はい。彼らにエリアを奪われてしまいました」
「ペイン。これがお前の策略か」
ハンゾウはペインの首筋へ刀を当て、強い口調でそう問い詰めた。だがペインは笑うだけで、その問いに返答はしない。それどころか、自分が置かれている状況が分かっていないのか、ハンゾウへ言う。
「君たちは後悔する。ここで君たちは死ぬんだからな」
ハンゾウは怒り、ペインの首へ刀を走らせた。
「ハンゾウ、先走るな」
しかし刃はペインの首を通らない。
ペインは自らの首もとを黄金へと変化させていたのだ。
戸惑いを見せたその一瞬、
「ギルタブリル」
ペインへと走る謎の足音、その足音の主である正体はペインの顔目掛けて拳を振るう。ペインは刀で受け流し、その正体の腹へと刃を進める。しかし金属音とともに、刀は弾かれた。
頑丈な装甲、それが正体の体を覆っていた。
襲撃者の正体へ視線を移すと、体の七割ほどを甲殻で包んでおり、腰からは蠍のようなトゲトゲとした尻尾を生やしている。手の爪は鋭利なものとなっており、牙は毒を纏っているかのようなにおいを放っている。
「これは……モンスター!?」
「不正解」
そう言って、一人の女性がペインたちの前には現れた。
「お前は誰だ」
「私はティアマティア=ソフィア。〈魔法師〉の一人。そしてその子はギルタブリル、私が生み出した十一の怪物の一体」
「やはり〈魔法師〉か。ここでお前を討たせてもらうぞ」
ハンゾウは刃を握りティアマティアへと駆けるも、その行く手を阻むかのようにギルタブリルが立ち塞がる。
だがどれだけ刃を振るうおうとも、ギルタブリルの頑丈な体を貫くことはない。
「無駄だ。君のような弱者じゃギルタブリルは倒せない」
「灼熱に帰せ」
ノーレンスはギルタブリルを太陽のように熱い灼熱の中に包み込んだ。ギルタブリルの甲殻は燃え、溶け、そして跡形もなく焼失した。
「おいおいノーレンス、何殺してくれとんのじゃ」
ティアマティアは怒り、ノーレンスへ憤怒の眼差しを向ける。
「ティアマティア。下がっていた方が良いよ。トールちゃんが本気出すって」
そこへもう一人現れた。七色の髪にペイントで落書きしたような女性はティアマティアへとそう言う。
「まあ良い。ここはトールに任せよう」
そう言うと、ティアマティアとその女性はそこから去っていく。
「逃がすかーー」
「ーー逃がしてやれよ」
雷鳴とともに、巨大なハンマーを握る男が現れた。
「トール……」
「ノーレンス聖。残念でしたね。あなたが周囲の監視から目を離したこの一分で、君たちは死ぬこととなった。俺は他の連中のようにあまくないぞ」
トールは雷鎚を片手に、アニー目掛けて飛びかかる。
だがその雷鎚は一人の少年の剣によって防がれた。
その瞬間、今までずっと流れていた音が急に為るのをやめ、静寂が漂うような雰囲気が展開された。
「おや」
「アニーは、俺が絶対に護る」
「イージス。ここで君を試してあげましょう」
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