第268話 一分の死闘
今、ノーレンスとペインの戦いが始まった。
「魔法錬金術とやらを見せてもらおうか。三流くん」
ノーレンスはペインへと手をかざす。その瞬間、ペインの周囲から電撃が出現し、ペインを襲う。電撃は明らかにペインへと直撃したはずだが、電撃は黄金色の槍と変わり、ノーレンスへと飛んだ。
電撃は消え、代わりに槍が出現した。それに驚いていると、槍はノーレンスへと向かう。あと一歩のところで槍はノーレンスへと刺さるが、光の壁に防がれて槍は砕ける。
(なるほど。まずは私の力量の観察か。だが、)
ペインは更に隠し持っていた槍をノーレンスへ向けて投げた。ノーレンスの前には光の壁ができている。槍は壁に弾かれて攻撃は不発に終わる
……はずだった。だが槍は光の壁があったはずの場所を通り抜け、ノーレンスの脇腹を直撃した。
攻撃を受けたノーレンスは脇腹に感じる痛みが偽物でないことを確認し、ペインが何をしたのか、睨み付けて確認する。だが彼は槍を投げただけ。いったい何を……。
「言わなかったか?今の私は魔法錬金術を使えると」
「魔法錬金術……なるほど。魔法錬金術は魔法を思うがままの物質へ変化させる術。つまり光の壁を他の物質へ変えたというわけか」
「正解。よく分かったね。でももう遅い」
ではノーレンスの仮説が正しかった場合、他の物質へと変化された光の壁はどこにあるか。そして何に変えられたのか。
答えは簡単、風へ変えられた壁は形すらも変え、槍状になってノーレンスの周囲を囲んでいる。
「魔法聖とは名ばかりだな」
ペインは余裕と踏んだのか、余裕から生まれた笑みを浮かべながら、ノーレンスを煽る。
「魔法聖が出る幕ではない。じきに一分が経過する。その前に、あの少年を粉々に砕いてしまおう」
ペインが目を向けたのは黄金へ変えられたイージスの姿。
その瞬間、背後からハンゾウが片腕のみで刀を握り、ペインへと襲いかかる。
「
ハンゾウの刀を避けつつ、ペインはハンゾウの腹へ手をかざす。
「吹け。烈風」
風が吹き荒れ、ハンゾウは吹き飛ばされる。
イージスを守る者はいない、その状況下でペインは隠し持っていた黄金の槍を手に取る。
イージスへ向かって、ペインは黄金の槍を持って襲いかかる。そしてイージスの頭上へ飛び上がるや、その槍を頭を粉砕するように振り下ろした。
イージスの頭部は砕け、周囲には黄金の破片が散る。そしてノーレンスを見上げる。
「ノーレンス。君じゃ守れなかったな。この少年は……」
ペインはある気配に気づき、体勢を後ろに崩した。その気配の正体は、黄金へ変えられたイージスの背後に息を殺して潜んでいた。
「なぜお前が……」
そこから剣を握って現れたのは、黄金に変えられていたはずのイージスであった。
イージスの背後からイージスが、普通では考えられない光景に、ペインは驚きを隠せない。
「何が……」
「最初から全て予想通り。ノーレンス聖の創り出した俺の分身が黄金へ変わるとともに、俺は黄金に変えられた自身の分身の背後に隠れてお前が攻撃する瞬間を待っていた」
「まずい……」
「なあ。
イージスの剣には純白の光が纏われている。光は眩しいまでの光を輝かせ、周囲を輝きに満ち溢れさせる。
勢いよく剣を振るうイージスの剣を、ペインは避けられない。
「人を黄金に変えたんだ。それ相応の報いを受けろ。〈
黄金に染められたイージス、だがその背後には純白の剣を構えるイージスがいた。魔法錬金術で黄金へ変えることは叶わない。避けることもできず、イージスの剣が勢いよくペインへと振るわれる。
純白の光が天を斬り裂くように投げ飛ばされた。空には巨大な穴が空き、真夜中だというのにそこからは光が漏れている。
「さすがはイージスだな」
ペインはその一撃で宙へ投げ出される。
「エリアぁぁぁぁあああ。逃げるぞ」
だがその叫びが響き渡ってから数秒経っても、ペインが転移されることはない。ペインは屋根に背を打ち付けた。
「エリア……まさーー」
「そのまさかだよ。エリア、君の共犯者は確保した」
ペインの首もとへ、先ほど烈風によって引き飛ばされたハンゾウが刀を向けている。
「最初から詰んでいたということか。その戦いは……」
「ああ。終幕だ」
「終われればそれで良かったんだがな、世の中がそんなにあまいと思うなよ。世界とは、常に苦難の連続であることを忘れるな」
その頃、海岸付近にあった時計塔の屋上で、スナイパーライフルを片手にペインを狙っていた少女ーーエリアはアニーによって取り押さえられていた。
「離せ」
「嫌だね。転移魔法使いは厄介だ。君を逃がすわけには行かない」
その時だ。
天空に空いた光が漏れる場所より、雷が海へ向かって降り注いだ。海は荒れ始め、それを目にしたエリアは言う。
「残念だったな。これから君たちは後悔することになる。〈魔法師〉、彼らが来るよ」
「〈魔法師〉だと!?」
雷が落ちた場所は海、そこには三人の人影が見える。
「なぜここに奴らが……」
「私たちは協力していただけだ。鍵の儀式とやらに」
「鍵……。まさか、スフィア、それともグランか。それとも……」
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