第259話 激突
アポレオンにスフィアを奪われた。
イージスは自らの弱さへ憤りを感じ、強く床を叩いた。
腹の痛みは消えず、激痛に未だ苛まれている。助けはこない、魔法も使えない。だがそこへ、一人の女性が現れた。
「イージス=アーサー。こんなところで何をしている?」
そう言いながらイージスの前に姿を現したのは、アマツカミ学会卒業生であるリューズ=アズカバンであった。
「なぜかアニーたちがグレイシアたちと戦っていると思えば、こちらでは一人苦しんでいる者がいる。どうしてこんなことになっている?私はもう理解が追い付かないのだが」
リューズは少し困惑している様子だった。
「リューズさん。スフィアを知っていますか?」
「知っているも何も、うちの生徒だろ。知らないはずがない」
「ではそのスフィアが研究対象にされていることは知っておられますか?」
「確か、それはスフィアが自分から研究対象にしてくれと言っていた気がしたな」
「自分から!?」
「私には理由は分からないが……。そういえば彼女が研究対象になる前、ダイニングと何やら会話をしていたが。確かその後にスフィアと話した時は、まるで呪いでもかかったようにボーッとしていたな」
「呪い!あの男、〈魔法師〉にスフィアを渡すつもりだったんだ。だから呪いをかけ、研究対象という名目で束縛し、〈魔法師〉にスフィアを渡すということか」
「すまん。よく分からん」
何も知らないリューズは、イージスの言っていることに理解ができていない様子であった。
それもそのはず、彼女はまだ何も知らない。それを密かに悟ったイージスは彼女へ事の成り行きを説明した。
自分たちがここにいる理由、スフィアが『鍵』という特殊な存在であること、『鍵』という存在が〈魔法師〉が求めている特殊な存在であるということ、それらを伝えると、リューズは納得し、色々と察した。
「ダイニング先輩。まさかあの人が仲間を売るような奴だったとはな。だがあの男がどういう奴か知れれば後は簡単だ」
「リューズさん。一体何をするつもりなんですか?」
「結局のところ、ダイニングを倒してしまえば全ては終わる、だろ」
「ですがダイニングはアポレオンという男と手を組んでいます。策もなく真正面から立ち向かえば、」
「おいイージス。お前はいつからそんな腰抜けになった?少なくとも私と戦った時の君はもう少し強く、勇ましかったよ。一度の敗北でそう嘆くな。必要なのは策じゃない、度胸だろ」
リューズの言葉に、イージスは迷いを見せる。
それを見たリューズはイージスへ近づき、顔を近づけて力強く言った。
「イージス。そんなに心配すんなって。私もスフィアの救出に協力するから。めそめそしてばっかいると、いつか大切なものを守れなくなるぞ」
「守れない……」
イージスは強く剣を握りしめた。
「リューズさん。協力してほしい。どうかスフィアを、一緒に救ってくれ」
「ああ。この私に任せとけ」
リューズは髪をなびかせ、そう答えた。
イージスは立ち上がり、リューズは剣を抜いた。
「アポレオンという男が来たのは恐らく今日で初めてだ。今日だけダイニングやグレイシアの様子がおかしかったからな……って、まさかグレイシアも……」
気付いた時は既に遅かった。
グレイシアとノースが交戦中、アポレオンが姿を現した。
「おやおや。こんなところに珍しいですね。ノーレンス=アーノルド」
「知られているのなら仕方がない」
ノースは自身へかけていた変装魔法を解除した。そして自身がノーレンスであることを明かした。
「それにしても私の正体を……。なるほど、"神々の魔眼"か」
「知っているのか。知っているのなら、あなたの口は封じなければいけませんね」
アポレオンは火炎を纏う剣を握り、ノーレンスへと斬りかかる。
「魔法聖。ここであなたを討ちましょうか」
「やってみろ」
今、〈魔法師〉のアポレオンと魔法聖のノーレンスが激突する。
秀才アマツカミ学会に漂う不穏な気配、そして何か隠しているであろうアマツカミ学会の正体はいかに……。
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