第257話 束縛された彼女

「イージス。何でこんなところにいるの?」


 イージスは今、謎の部屋の中でスフィアと二人きり、隔離された部屋日いた。

 なぜこんなことになったのか、それは少し時間を遡る。


 ノース、アニー、カーマ、イージスはスフィアを探すため、固まってアマツカミ学会の中を行動していた。

 しばらくの間探していたが見つからず、途方に暮れていた最中、隠し通路があることにノースは気づいた。イージスやカーマですら気づかなかった隠し通路、その魔力を感じ取ったノースはその壁へ手を当てた。


「隠し通路を無理矢理こじ開ける。離れていろ」


 だがその時、ノースたちを囲むように十数人という数の魔法使いたちが現れた。その筆頭には、グラシアスが冷気を纏う剣を構えて立っていた。


「何をしている。ヴァルハラの犬よ」


「記憶を保持しているのか!?」


 ノースはあの時、確かにグラシアスの記憶を操って自分達に関わる記憶を消した。だがそれが、どういうわけかノースたちへ牙を向いていた。


「記憶はないさ。ただ俺の仲間が見ていただけさ。それを教えてくれたんだよ」


「で、それが嘘かもしれないぞ」


「外部の人間と内部の人間、信じるとしたらどう考えても内部の人間だ。常識を考えろ。そして後悔しろ」


 グラシアスが剣を構えたことに、イージスも剣を抜いて牽制する。

 カーマとアニーも戦闘の構えに入り、ノースは隠し通路の扉を開けようと脳内で魔法を構築していた。


「無駄無駄。その通路の扉を開けるにはさ、魔法聖ほどの実力がなければ壊すことは不可能。ただの生徒の君たちじゃ、その扉は開けられないよ」


「開いた」


「……は!?」


 理解できない、といった感じにグラシアスは目を見開いて驚愕していた。

 当然ただの生徒には開けられるはずもない、だが生憎ノースは魔法聖の一人、ノーレンスである。ならば開けられないはずがない。


「だが開けられたところでだ、ここでお前らを仕留めればいいだけの話」


 グラシアスが剣を振るうと、隠し通路は凍りつき、入り口が塞がれた。氷を火炎で溶かそうとするも、それを阻止するようにグラシアスたちは襲いかかる。

 苦戦する中、ノースは気づいた。


「あれ……。イージスがいない?」


 既にイージスは隠し通路の中を通り、その先にある部屋へと抜け出していた。そこで丁度出会ったのが、スフィアということであった。


「イージス。何でこんなところにいるの?」


「スフィア。君は『鍵』なんだ。だから君を救いに来た」


「そういえばそんな話したっけ。でも何で私が拘束されていることを知っていたの?」


「拘束?」


 話が噛み合わないことに違和感を感じ、イージスは首を傾げた。

 その反応を見たスフィアが、何かずれていることを感じ取り、イージスへ質問をした。


「ねえイージス。私を救いに来たって、何から救おうとしているの?」


「『鍵』という存在を〈魔法師〉が探して悪用しようとしているから。だからそれまでスフィアを保護しようかなって……」


「なるほど。どうりで話が噛み合わないわけだよ」


 スフィアは笑みをこぼすが、話の内容を理解できていないイージスは未だ首を傾げたまま。


「スフィア。まだちょっと理解できないんだけど……」


「実はね、私はここ秀才アマツカミ学会の中で拘束されているんだよ。外に逃げ出せないように。そして研究対象として研究できるように」

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