第256話 鍵の在処
イージスが会長と話をしていた頃、アニーとノースはその部屋の外の廊下で待機していた。同伴していたカーマはトイレへ行き、その場にはいなかった。
そこで二人は家族として、静かに話をしていた。
「アニー。魔法船で救えなくてごめんな」
「気にしてないよ。そんなこと」
「だが俺があの時ペンタゴンを止めていればアニーが危険な目に遭うこともなく、五神復活の柱にもなることはなかった」
「でも、ペンタゴンは魔法聖だから。それにもう過ぎたことだし、父上はペンタゴンを倒してくれた。大丈夫だよ、私は本当に気にしていないから」
「そうか……」
そう話す二人のもとへ、薄氷の仮面を被り、冷気を纏っている羽衣を身に付けた男が腰に剣を下げ、歩み寄ってきた。それには二人も警戒し、身構えた。
異質な雰囲気を放つ彼はまず一言、二人へ言った。
「初めまして。名門ヴァルハラ学園のスパイども」
この男はやばい、そう思ったノースはアニーをかばうように男の前へ立つ。
「カッコいいね。お前ら二人、カップルか?」
「お前は何者だ?この学会の生徒か」
「いいや。俺はこの学会の卒業生、グラシアス=アイススピア」
「卒業生?なぜまだこの学会にいる?」
「教えないよ。ただスパイはここで排除しないとな」
グラシアスは鞘に収められた剣を抜く。その瞬間、周囲には冷気が立ち込め、廊下のいたるところが凍りつく。
敵対行動、それを見たノースは両腕に火炎を纏わせ、向かってくるグラシアスへと拳を振るう。グラシアスの剣とノースの拳が触れ合った瞬間、周囲の氷は溶け、グラシアスの剣から放たれる冷気は消失する。
「俺の冷気を上回るだと……」
グラシアスは距離を取り、ノースとの距離を取る。
「俺はスパイじゃない。それでも尚攻撃して来ようものなら、迎え撃つまでだ。お前の身の補償はできないがな」
「ふざけるな。スパイ相手に、引き下がるはずがないだろ」
グラシアスは果敢に剣を振るう。だが相手はノーレンス=アーノルド、魔法聖だ。ただの一般生徒がかなうはずもなく、ノースによってグラシアスは動きを減速させられた。
「無属性原始魔法壱五〈
グラシアスの動きはまるで0.25倍速にしているかのような遅さ。その程度の動きならば、たとえ一般人であろうとも彼を倒すことができるだろう。
「とりあえず話をしようか。とはいっても、君が喋るのも遅くなるから、手っ取り早くいこうか。〈
ノースはグラシアスの顔へ手を近づける。そこでノースの手からは煙が放たれ、それを吸い込んだグラシアスには睡魔が押し寄せ、眠りについた。
もちろん、ゆっくりと。
眠りについたグラシアスをノースは壁に横たわらせると、イージスが会長との話を終えて出てきた。すぐに壁に背をつけて眠るグラシアスに気づき、動揺する。
「この人は?」
「グラシアスとか名乗ってたっけ。この男は俺たちのことをヴァルハラ学園からのスパイだと勘違いして襲いかかってきたんだと」
「それで眠らせたのか。でもあとで面倒なことになるんじゃない」
「大丈夫。ついでに記憶も消しといたし、起きた時には全部忘れてるよ。それより早く『鍵』であるスフィアを探さないとな」
「ああ。なる早で行こう」
そこへカーマ先生が戻ってきた。
彼らはスフィアを探すため、学会の中を探し歩く。
そんな彼らの姿を、一人の男は陰から監視していた。
(鍵であるスフィアを探す?なぜ奴らは鍵の存在を知っている!?それにスフィアが鍵であるということも。早く、早くダイニング様に伝えなければ)
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