第251話 ぶつかり合う策と策
城壁を破壊し、イージスたちは壊れた城壁の隙間から魔法城目掛けて走り出す。
砂煙で姿が見えづらくなり、魔法城周辺に散らばっている六年生たちを素通りしてイージスは魔法城を直行する。そのサポートととして、アタナシア、アニーが援護する。
「ブック。イージスが魔法城へ侵入。サポートのアニーとアタナシアも魔法城へ侵入したよ」
「ここからは俺の〈
だがその作戦は既に失敗に終わっていた。
ブックは魔法城内には外部からの魔法を遮断するダークの固有魔法が発動していると予想していた。そしてブックの予想していた通り、魔法城内は外部からの魔法を遮断している。
それにより、ブックの全てを知る魔法は魔法城内の様子を把握できなくなっている。
「イージス。そこからは任せたぞ」
攻城戦が開始してから一分と経たずしてイージスは魔法城内へ侵入した。それには驚きを見せるダークであったが、すぐに指揮へ戻るため魔法城内へ入る。
「シャイン。イージスの現在地は?」
シャインは持っていた自分の身長より少し大きな杖を額へ当て、目を瞑る。
「未だ一階です。詳細な場所は……見つけた、二階へ続く階段にて戦闘中です」
「速くボルトを派遣しろ。あの男なら十分な足止めをできる。その間に他の戦場での指示をしなければな」
ダークは矢倉から外の様子を見ていた。
壁の破壊という予想外の行動に、仕掛けていた罠魔法の多くが無意味なものとなってしまった。無意味となったそれらの魔法を仕掛けていたダークはすぐさま解除する。
しかし城周辺に仕掛けていた地雷系の罠魔法により、四年生は既に二十名ほどが脱落している。
「シャイン。そろそろ仕掛けても良い頃だな」
「もうあの作戦をですか。始まってから十分と経過していないですよ」
「時間が経てば経つほどあの作戦は使いづらくなる。今が完全なチャンス。始めろ。そして終わらせろ」
魔法城四階、そこにの階の壁は全て壊され、残されたのは天井を支える四本の柱のみ。
開放的となったその場所に身を潜めていた五十人ほどの魔法使い、彼らはそこから一斉に地上へ向けて魔法を放つ。
爆裂魔法、雷電魔法、暴風魔法、火炎魔法、氷結魔法、無数の魔法が城の周囲にいる四年生たちを襲う、
「ブック。やはり奴ら、仕掛けてきた」
「了解。さて、指揮者はここまで。ここから演奏家として、奏でよう。魔法を」
ブックは書物を手に、書を持っていないもう一方の手を壁の上から四階にいる六年生目掛けて向ける。
その時、既に地上にいる百名ほどの四年生の魔法使いたちが六年生の放った無数の魔法を浴びる。
「数が多い場合の戦いは苦手だろう。それが敗因だよ。魔法戦略学二位スカレア」
ダークの作戦により、四年生の多くが魔法によって行動不能になっていると思い込んでいた。しかしそれは違う。
砂煙が晴れ、ダークは慢心しながら外を眺めた。だがそこに転がっていたのはほんの数名の生徒のみ。
「幻覚だよ。ダーク」
城壁の上を見れば、そこには百名以上の四年生が大魔法を放とうとしていた。
「火が集まれば巨大な渦となる。渦が集まれば巨大な波となる」
それにはダークも驚いていた。
「おいおい。まだイージスたちがこの城にいるんだぞ……。それなのになぜ……」
壁上にいるスカレアは、叫ぶ。
「一斉に放て」
その合図とともに、無数の火炎が群を成し、巨大な波へと変わっていく。そして魔法城目掛けて突撃する。
紫芳より襲いかかる火炎の波、避けることはほぼ不可能。防ぐことも不可能に近いーーただし、事前に対策していなければだが。
「反転魔法、発動」
魔法城へ直撃した火炎の波、だがそれは魔法城を破壊せずに跳ね返り、壁上にいる四年生たちを襲う。
「まさか、読まれていた!?」
火炎の波にのまれ、多くの生徒が行動不能へ陥った。そこへ四階にいる六年生たちが一斉に魔法を浴びせる。何名かは城壁の外に降りて姿を隠したものの、何名かは追い討ちをかけられて負傷者は増すばかり。
何とか生き残ったのは二十名ほど。
「まさか驚いたよ。まんまと俺の作戦通りに動いてくれたね。スカレア」
ダークの作戦にスカレアたちははめられた。
「何が……何が起きた」
「読まれていたんだ。多分、城の付近にいた幻覚を見破られていた。だからそこから色々と悟り、私たちがこれから行うことを予想した。その上で魔法城を反転魔法で囲んだ。つまり私たちはあの男の思惑通り動いたってことだよ」
スカレアは最初に破壊された城壁の隙間から魔法城を覗き込む。
「さすがは魔法戦略学首席、ダーク=ブラックウルフだ」
既に百以上の戦力を失い、残るは二十名ほど。
対して六年生側にはまだ百ほどの戦力が残っている。状況は絶望的だ。
「さてどうする?スカレア。もう後がなくなったね」
ダークは狼の仮面を被り、呟く。
「全力で来なよ、後輩諸君。戦いはまだ始まったばかりなのだから」
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