第249話 不安と期待のコンフラクト
クシロは魔法船内に囚われている龍を見つけ、魔法船の外にいるイージスたちのもとへ向かった。だが既に彼らは消えていた。
「あれ?いない?」
その頃、スカーレットたちと戦いを繰り広げていたキクノスケはペンタゴンの魔力が周囲から消えたことを悟り、彼らから距離を取った。
「まさか……あの方が……」
「どうかしたのか。侍」
青ざめるキクノスケへ、スカーレットは飛びかかりながら問う。
「お前らとの戦いは終わりだ。じゃあな」
スカーレットの剣は空を切り、キクノスケへは当たらない。キクノスケは既に姿を消し、どこかへと消えていた。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
そこはノーレンスが創り出した固有結界の中、そこにいる限り外部から情報を聞かれることもなく、そして襲われることもない。
「父上。話したいこととは何でしょうか?」
アニーは素朴な疑問を呈する。
ノーレンスは悩みつつも、隠していたことを公言することを決意する。
「『鍵』、それについては聞いたことくらいはあるだろ。二人とも」
「はい。それくらいなら」
「私も聞いたことくらいはあるかな」
「鍵、それが一体何なのか。簡単に言えば、それはアーサー家の力を完全に引き出す人柱。君がアニーに眠る鍵を解放したように、〈魔法師〉最強の男、ゼウシアも鍵を開ける」
「ゼウシアも?それはどういうことですか」
「その話はまた今度だ。だがそれよりもイージス、君へ任せたいことがある。これより君には世界中に散らばる『鍵』である者を探してほしい。もしゼウシアに見つかれば悪用されかねない。だからゼウシアを倒すまで、『鍵』を私が護る」
「なるほど。ですが、どうやって『鍵』を見つければ良いのですか?」
イージスが呈した素朴な疑問に、ノーレンスは返答に頭を悩ませた。
「そうだなー。イージス、何か感じたりしなかったか?『鍵』の気配、とか」
「そういえばなぜか分からないのですけど、アニーの居場所を強く感じました。アーサー家が『鍵』を開く者ならば、『鍵』という存在を強く感じ取れると思います」
「それは興味深い。では任せても良いか?」
「はい」
「アニーを狙ったように、また〈魔法師〉が『鍵』を狙うのは明白だ。だから任せたぞ。イージス」
ノーレンスより使命を託されたイージス。
『鍵』を見つけ出す。
イージスとアニーはクシロたちと合流し、アズール先生とニアーザ先生のいる浜辺へと戻ってきた。
「お前ら。なぜ上空から?それにその龍、何だ?」
「秘密です」
「そ、そうか……」
困惑しつつも、アズールは問いただすことはしなかった。
事件がありながらも、ホーヘン学園とヴァルハラ学園の合同合宿は終わり、皆帰っていった。
寮へ帰り、イージスはベッドの中で考えていた。
「鍵か……。俺に、護れるだろうか」
何度もアニーを救えなかった、それを経験しているからこそ、イージスはノーレンスより下された使命に葛藤していた。
自分に『鍵』を護れるか、まだ遠い先のことへ、イージスは胸をざわつかせていた。妙に寝付けず、イージスは何度も寝返りを打つ。
不安を抱えるイージスは、その日、眠ることはなかった。
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