第248話 鍵は開く
転移し、アニー、イージス、クシロは向かった。
ペンタゴンのいる魔法船内のとある一室に。
その部屋の椅子に優雅に腰掛ける男ーーペンタゴンはアニーたちの登場に驚いた様子であった。
「何故ここが分かった?アニー」
「そんなの当たり前ですよ。あなたの放つ気持ち悪い魔力だけは、忘れることはありませんから」
「なるほど。で、この私に勝負を挑むと?現在の魔法聖であるノーレンスでも敵わないこの私に」
ペンタゴンは自信満々にそう言った。
だがアニーは怯むことなく、一人ペンタゴンのもとへ歩み寄って叫ぶ。
「戦いにきたんじゃない。縁を完全に切りに来たんですよ。糞やろう」
初めて見せたアニーのその口調に、イージスは心の中で驚いていた。
「祖父に向かってその態度か。立場を知れ」
「立場?私の父はノーレンス=アーノルド。私の母はクレナイ=アズマ。誰が何と言おうと私は二人の娘なんだ。お前なんかはただの部外者に過ぎない。立場を知るのはあなたの方だ」
「ふざけるな。あの二人が結ばれたのは私のおかげだ。私がノーレンスを育ててきたからあのクレナイとかいうガキと結ばれただけで、私がいなければ今頃他人同士だった。私に束縛されたおかげだ。だからお前も私に束縛されていーー」
「ーーふざけるな」
怒りが込められたその声が放たれた途端、透明化している魔法船へ向かって巨大な落雷が落ちる。その落雷はペンタゴンの頭上の天井を破壊し、ペンタゴンへ直撃する。
予想外の攻撃に意識を飛ばしかけたペンタゴン、何とか意識を保ち、頭上を見上げた。
「誰かと思えば、お前か。ノーレンス」
「父上。これ以上あなたを見逃すわけにはいきません。ここであなたの野望を完全に朽ちさせる」
頭上にいるノーレンスを睨み、ペンタゴンは天井に空いた穴から外へ出た。その後を応用にアニーたちも外へ出た。
その瞬間、そこではペンタゴンとノーレンスが激しい戦闘を繰り広げいた。電撃が宙を駆け抜け、爆炎が空から降り注ぎ、突風がそれらを弾き飛ばす。
「これが……魔法聖同士の戦い……」
「魔法聖同士!?」
アニーが思わず口にしたその言葉に、イージスは驚く。
「うん。ペンタゴンは私の父ノーレンスが魔法聖になる前に魔法聖だった。先代の魔法聖なんだよ」
「どうりであのノーレンス理事長と渡り合えているわけか」
イージスの目には二人の戦いは互角に映っていた。しかし、ノーレンスのある事情を知っているアニーにとってはノーレンスが圧されているように見えた。
「父上……」
ノーレンスは魔力の半分をあらゆる施設の保持のために使っている。その一つが罪人たちを収容しておく〈魔法地獄牢獄〉。他にもいくつかあるが、それらの維持によりノーレンスは本気を出せない。
魔法聖を引退したとはいえ、全力を出せるペンタゴンにノーレンスは圧され始める。
「このままじゃ……」
「イージス。お願いがある」
そう言うアニーの体は輝きを纏っている。
純白の光、それはアンノウン=クロノスタシスと戦った時に現れた純白の光と同じであった。
それを見たノーレンスは気付く。
「鍵が……開く……」
イージスはアニーへ手を伸ばす。その手をアニーが掴んだ瞬間、イージスは全身に純白の光を纏う。
「あの力……アーサー家の救世主、イージス=アーサー」
イージスが握る夕焼けの剣は純白に輝き、それにペンタゴンは驚きを見せる。
「ふざけるな。何だあの力は……」
「ペンタゴン。奴を倒して。
アニーは叫んだ。
その声を背に、イージスは両手で剣を握り、上空にいるペンタゴンを睨み、足を蹴り上げた。
「〈
横殴りに振るわれたイージスの剣、剣の一振りは純白の光を激しく放ち、それに飲み込まれるようにペンタゴンは吹き飛んだ。
体勢を立て直せず、吹き飛ぶペンタゴンへノーレンスは手をかざす。
「囚われろ。愚方の檻に。〈魔法地獄牢獄〉、展開」
ペンタゴンの背後にはまるでブラックホールのような空洞が出現する。小さいながらもそれの引力から逃れられず、その中にペンタゴンは吸い込まれる。
「ノーレンス。覚えていろ」
「もう二度と、会えないといいな。父上」
「くぞぉぉぉおおおおおおおおお」
完全にその中へ吸い込まれるとともに、ブラックホールは消失する。
ペンタゴンが消え、戦いは終わる。その光景を、アズールとニアーザから逃げ切ったアポレオンが魔法船の陰から見ていた。
「さすがはゼウシア様の息子さんだ。想像以上の強さ、そしてもう鍵が開けるようになったのだな」
アポレオンはその場から去り、島から遠ざかる。
それに気付くこともなく、ノーレンスたちは戦いが終わり、安堵する。ノーレンスはイージスとアニーのもとへ歩み寄る。
「イージス。そしてアニー。二人へ話さなくてはいけないことがある。すぐそこに迫る、戦いに備えるために」
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