第246話 こねくと

「アポレオン。何故貴様がここにいる?」


 アズールとニアーザは警戒している。

 目の前にいるには〈魔法師〉の一人、アポレオン。油断することは命取りである。


「俺はこの島にいるであろうイージスとアニーに用がある。二人はどこだ?」


「知らないな」


「ああ。私も同じだ」


「そうか。お前たちは嘘を吐くか」


 アポレオンは燃え盛る魔方陣の中から火炎を纏う剣を取り出した。その剣を勢い良くアズールへ振るう。しかしアポレオンの剣に纏われていた火炎は消失し、その剣をアズールは釣りざおで受け止めた。


「今、何をした……!?」


「さあな。ただ一つ言えることは、案外その程度なんだな。お前は」


 アズールは強気でアポレオンへそう言い放つ。

 自分が優勢だと思い込んでいたアポレオンは距離を取る。


「アポレオン。逃げるならとことん追い込んでやる。さあ逃げ回れ。ここは海に囲まれた孤島、私の得意なフィールドだ」



 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



 空を駆けるイージスは微かに見えていた魔法船の壁を剣でぶち破る。その穴から魔法船の中へ入ったイージスとローズは、魔法船をはっきりと認識することができた。


「中からしか魔法船を見ることはできないか」


 そこへスカーレットやボルト、シャラとカイザーも到着した。


「イージス。森の外に出るのは禁止だと言われていただろ」


 スカーレットはイージスへそう言った。しかし気付かぬ間に魔法船の中へ入り、魔法船を視界に捉えたことによってスカーレットたちは気付く。


「なるほど。何かあるのだな。この合同合宿の裏には」


「ああ。何となくだけど、この魔法船の中にアニーがいる気がする」


「何で分かるの?」


「何となく、としか言えないけど、絶対にアニーはここにいる。だからこの魔法船の中から探し出す」


「協力するよ。で、どこにいるかは分かるの?」


「分かる。感じるんだ。強く、彼女を感じる」


 イージスが向いている方向には、確かにアニーはいる。だがそれは人間には到底不可能な領域、魔法でも使っていない限りは彼女の居場所を感じ取ることはできない。

 イージスとアニー、二人は何らかの関係で結ばれているのだろうか。固く頑丈なその糸で結ばれているのか、それはイージスにも分からない。

 それの答えがなくとも、イージスはアニーを目指して足を進める。


 魔法船内を走り、イージスはひたすらにアニーの居場所へと向かっていた。だがそんな彼らの前に、一人の青年は立ち塞がる。

 イージスは足を止め、剣を構えた。


「何者だ?」


「名門サイトー家長男、キクノスケ=サイトー。ある人物より頼まれたため、お前たちの行く手はここで防がせてもらうよ」


 彼は腰に差していた鞘から刀を抜き、イージスへ構える。


「今は少しでも早くアニーのもとに……」


「イージス。この男なら私たちに任せて先に行きな」


 スカーレットはそう言い、剣を抜きその剣へ火炎を纏わせる。それに続き、シャラやカイザー、ボルトも戦闘態勢に入る。


「俺の固有魔法は"絶対領域"。ある一定の範囲内であれば、俺は圧倒的速度と力を手に入れる。そして今この空間が、俺の絶対領域。誰一人として通れると思うなよ」


 キクノスケは自信満々に刀を構える。

 スカーレットはキクノスケへと駆ける。その瞬間、イージスも同時に駆け抜け、イージスを囲むようにしてボルトたちが走る。


「来い。魔法使いども」

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