第237話 任せ、任され
ブックは手に持つ書を見ながら白丸たちが囚われている場所へと駆け出していた。
「ねえブック、何で奴らは私たちなんかを捕らえたりしたんだろうね」
ふと抱いた疑問を、スカレアは言った。
それに全知の書を有するブックがその書のあるページを見ながらスカレアへと説明する。
「どうやら俺たちを捕らえた男はイージスと因縁があるようでな。それで俺たちがこの島へ来るのが分かった男はまず白丸たちを捕らえ、そして俺たちを捕らえた」
「なるほど。じゃあイージスは今その因縁に決着をつけるためにってことか」
「ああ。だから結局、俺たちがあの戦いに関わってはいけない」
「なるほど。人情ってやつか」
「ああ。そういえばスカレアは人情には厳しい島の出身だったな」
「もちのろんなのだよ。それに私の島はって、そんな話をしている場合でもなさそうだ」
足を止めたスカレアはすぐさま魔方陣から刀を取り出し、正面に立ち塞がる女性へ視線を向けた。ブックも書を手に、その女性を見る。
「パール=ブルーシールド。敵ですか。面倒だな」
ブックはパールを睨み付けた。
だがパールはそんな視線には目もくれず、両手に青い風を纏わせた。
「お前たちはここで食い止めさせてもらうよ」
パールは両手をブックたちへかざす。それを見、ブックは書を見てパールがしようとしていたことを瞬時に悟った。
だがそれよりも先に、次の行動を悟ったアタナシアがブックたちを押しきり先頭へ立ち、両手を正面へ向けた。
「防御魔法術式、展開」
空中には黒紅色の紋様が刻まれる。
だがそれと同時、パールの両腕からは青い風の突風が今彼女らのいる狭い通路を吹き抜けて進む。だがその突風はアタナシアが咄嗟に生成した黒紅色の壁によって防がれる。
「厄介な奴がいるな。私と同じ防御系」
「アタナシア。ありがとう。だが相性が少し悪い。だから君とクイーンには白丸の救出に向かってもらいたい」
「なぜだブック。私なら」
そう言うアタナシアの耳元で、クイーンやスカレアたちに聞こえないようにブックは言う。
「違う。あのパールという輩は元魔法技術士、つまり機械系統の操作が得意だ。もしそれがバレれば、一部機械の部分があるアタナシアでは不利になる」
「さすがは全知の書だな。何でもお見通しか」
アタナシアは感心し、すぐに呟く。
「まあ理に叶っているな。ならば白丸の救出は任せておけ。クイーン、転移の札で白丸のいる檻まで飛ばせ」
「了解」
既に用意していたクイーンは札を掲げ、アタナシアへ手を伸ばす。
「させるか」
それを阻止するようにパールは自身の背中から突風を発生させ、ブックとスカレアの間をすり抜けてアタナシアのもとまで飛び、アタナシアへ手を伸ばす。
だがそんなパールの手が最初に触れたのはアタナシアではなく鉄の壁、ブックの操作系の魔法により鉄の床が隆起し、パールの行く手を阻む。
「花一紋目」
スカレアが振るう刀をパールは青白い光の壁を造って防いだものの、背後が疎かとなり、そこから鉄の壁が破裂し、弾丸のようにパールへ飛び交う。
「ちっ」
舌打ちをし、パールは自身の全身を囲むように青白い光の壁を生成する。だがそれではアタナシアのもとへはいけない。
ふと視線を向けると、既にアタナシアはクイーンの手を掴んでいた。
「任せたぞ」
「転移」
クイーンとアタナシアはパールの前から姿を消した。
次に現れた場所は白丸やゴブリンたちが捕まっている檻の前。檻の中には白丸とゴブリンが捕まっている。
「助けに来たよ。白丸くんたち」
初対面ではあるものの、クイーンとアタナシアからイージスのにおいを嗅ぎ、向けていた僅かな敵意を消失させた。
「すぐに助けるから待っていろ」
アタナシアは鍵へ触れ、開けようとしたその時、何者かがアタナシアへと蹴りを入れる。まるで鋼鉄の一撃、それにアタナシアはすぐに鍵から手を離して両腕で受け止めた。だがその一撃は重く、アタナシアは膝をつく。
すぐにその襲撃者を見た。
「どうしてお前が……」
アタナシアを襲った者の正体、それを見てアタナシアとクイーンは固まった。
「イスター!?」
「ハイジョ、シンニュウシャハ、ハイジョシマス」
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