魔法作家編

第232話 裏童話島

 アノ、その少年を預かってから一ヶ月ほどが経ち、既に夏休み後半、何もできぬまま夏休みが終わろうとしていた。

 さすがにそれはまずいと思ったのか、イージスはアニーとともに色々と考えていた。


「なあアニー。やっぱこんだけルームメイトが増えたんだからどこか行きたいよな」


「そうだね。でもどこに行こうかやっぱまだ迷うよね」


「そういえばさ、この前魔法作家になっただろ。そこで魔法作家の先生に聞いたんだけど、童話島の海底には謎に包まれた島があるらしいんだ。行ってみよ」


「童話島か。まあ面白そうだし、そこにしようか」


 そんな経緯があり、今、イージス、アニー、スカレア、ブック、クイーン、イスター、アタナシア、アノは童話島へ向かった。

 童話島には仲の良いリーフがおり、例の島へ行く前にリーフ村へと向かう。だが村は何やらソワソワしていた。


「イージス。村に用があるならすぐに来てくれ」


 村の入り口を歩いていた狼の黒丸はイージスを見つけ、そう声をかけた。

 その様子を見て、黒丸を初めて見るクイーンは思った。


(狼が……喋ってる)


 イージスは黒丸へ案内され、リーフのもとへ向かった。


「リーフ。どうかしたのか」


「イージス。良いところに来てくれた」


 イージスを見た瞬間、険しい表情をしていたリーフの表情は和らぎ、助けを求めるようにイージスへ駆け寄る。


「かなり大変そうだな」


「そうなんだよ。どうやらこの島の裏側に何か島が逆さまに存在することが分かったんだが、その島に白丸が探索に行ってから、ずっと帰ってこないんだ」


「白丸が……。というかこの島の裏にある島って……」


 イージスは聞き覚えがあった。

 童話島の裏に位置する島、それは紛れもなく魔法作家の先生から聞いた例の島で間違いないだろう。


「まさか本当に実在するなんて……」


 イージスは驚いていた。


「白丸が帰ってこないか……。何かあったのだろうか。心配だな」


「おおまかな予想はついている。恐らくその島は一度入ったら出られない。魔法によって。それ故、その島にあるであろう魔力の源を絶たない限り、白丸は救えない。まあ白丸だけでなく、ゴブリンの奴らもその島に閉ざされたまま」


「ならその島に助けに行くのか」


「ああ。そうだ」


 リーフは腰に刀を下げている。一体どこの刀だろうか、紅色の刃をしており魅力的だ。

 見た目からして相当な業物だろう。


「それよりリーフ、何でそんなに裏にある島に詳しいんだ?」


「そ、そんなことより早く白丸を救いに行こ」


 何か動揺しているのか、リーフは焦ったような口調でそう言う。

 イージスは少し不自然に思いつつも、執拗に問い詰めることはしなかった。


「じゃあ行こう。裏の島へ」


 童話島の地下に逆さに存在するという謎の島。

 これよりその島へ、イージス、アニー、スカレア、ブック、クイーン、イスター、アタナシア、リーフ、黒丸は突撃を仕掛ける。


「白丸。待っていろ。必ず助けに行くからさ」

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