第229話 鍵は開く
ダンジョンは崩壊し、その中に封印されていた無数のモンスターが目を覚ます。
あの時封印したのは百ほどであったはずだが、どういうわけか一万を越えるモンスターがダンジョンの外へと溢れ出ていた。
「なるほど。ダンジョンの中で数を増やしたか。モンスターども」
「ノーレンス。アンノウンが見当たらないけど、どうする?」
「まずはモンスターからだ。時間を操る魔法対策なら、できてはいる」
ノーレンスとクレナイはモンスターを前に怯むこともせず立ち塞がる。
モンスターたちはこれまで封印されていた恨みを晴らすかのように一斉に襲いかかる。
「じゃあ始めるか。モンスター殺しを」
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
ノーレンスとクレナイがモンスターを倒すために戦闘をする中で、イージスとアニーはこっそりと浮き島へ侵入し、ノーレンスたちの目を盗んでモンスターたちを倒していた。
そこは森の中、さすがに数が多く、二人では対処しきれなくなり、二人は森の中を逃げるようにして走って泉を見つけた。
「なあアニー、泉の中に何か見えないか?」
「言われてみれば……って、中にいるのは例の少年だよ。早く助けなきゃ」
泉の中にはダンジョンで拾った少年がいた。
助けようとするイージスとアニーの前に、一人の男が突如現れた。
「また時間を止められた」
「またお前たちか。懲りないな」
その男はアンノウン。彼は呆れたように二人へ視線を向ける。
アンノウンは消え、再びイージスの腹へアンノウンの拳が振るわれる。だがアンノウンの攻撃をイージスは剣で防いでいた。
「予期していれば、受け止められない程ではない」
「受け止めた?動けたとしても一秒もない。その一瞬で俺の攻撃を先読みしたというのか」
「ああ。実に単純な攻撃だ。故にアンノウン、まだ勝ち目は残っている」
イージスは剣を振るい、動揺するアンノウンの体へ傷をつけた。だがかすり傷程度、倒せはしないーーが、それがただの剣での一振りだったら。
イージスが振るった剣には純白の光が纏われ、次の瞬間、その光が解き放たれてアンノウンを襲う。アンノウンに直撃し、アンノウンは吹き飛んだ。
「時間魔法に頼りすぎだ」
アンノウンは傷だらけで地に這いつくばった。
まだ少年を取り込んでいないせいか、時間を巻き戻して傷を治すことはできない。不完全な時間支配魔法。
アンノウンはボロボロの体を起こし、立ち上がった。
「時よ、止まれ」
アンノウンはこの浮き島自体の時間を止めようとする。だがその魔法は何かによって弾かれた。
「この魔力の感覚……ノーレンスの野郎か」
ノーレンスがこの浮き島に仕掛けていた時間支配魔法の干渉を防ぐ罠魔法。それがアンノウンの魔法を解除した。
そこへ追い討ちをかけるように、剣を握るイージスが颯爽と現れる。
(反動で魔法が……)
アンノウンへ再び剣が振り下ろされ、純白の光がアンノウンを飲み込む。アンノウンは既に深傷を負い、ボロボロだ。
だが窮地の中、アンノウンは奇策を思い付いた。
「時間よ、止まれ」
アンノウンは自らの時間を部分的に止めた。それにより、自らが負っていた怪我の悪化は止まり、更にはこれから傷を負うこともなくなった。
だがそれに気付かず、イージスは再度剣を振るう。純白の光がアンノウンを襲うも、時間を止めたアンノウンには効かず、イージスへ拳が振るわれる。
「無駄無駄。大人に勝とうだなんて、舐めんじゃねえよ」
アンノウンはイージスを見下すように眺めた。
そんなアンノウンへ氷の刃が飛び交う。だが時間が止まったアンノウンはそれらを握り潰す。
「無駄って言ってんだろ。って、女の方か」
アニーはアンノウンの背後から出現し、今度は電撃を飛ばす。だが時間を止め、アンノウンはアニーの背後へ回り込む。
アンノウンが視界から消えたアニーはイージスのもとへ瞬間移動し、背後にいたであろうアンノウンの攻撃をかわす。
「転移か。うざいな」
「アンノウン。ここには魔法聖が二人来ている。早々に諦めな」
「無駄だよ。俺が真の力を取り戻せば、あの時本気を出していれば、俺は勝っていた。今頃世界を支配できていた」
「傲慢だな」
「傲慢さ。故に俺は、あいつらを許せない」
アンノウンは感情的になり、アニーへ手をかざす。アニーの時間だけ止まり、完全に動きを停止した。
「アニー……」
「少年よ。今この少女は時間を止められた。そしてここは今やモンスターの巣窟。さあ、終わりの始まりだよ」
イージスは剣を握り立ち上がるも、既に周囲は無数のモンスターに囲まれていた。よって逃げ場はない。
「アニー。俺はお前の守人だからな。お前のためなら俺は何でも懸けられる。たとえそれが、命であっても」
その時、イージスとアニーの間で何かが起きた。
まるで鍵が開いたような、そんな何かが二人の間で起きた。直後、アニーとイージスの意識は繋がった。
(これは……一体……)
「イージス。私を助けて」
イージスの全身には力が溢れていた。
それは先ほどまでとは比べ物にならないほどの、特大級の力を今イージスは有していた。
「ああ。御安いご用だ」
次の瞬間、イージスは全身に純白の光を纏い、純白の光を纏う剣を握ってアンノウンへと襲いかかる。アンノウンは時間を止める間もなく、その速さと強さに蹂躙されるのみ。
強すぎた、故にアンノウンは敗北する。
「あり得ない。俺がこの程度のガキに……」
「アンノウン。お前の敗因は、俺をあまく見たことだ」
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