第215話 再び始まる二人の物語

 四年生となったイージス=アーサーとアニー=アーノルド。

 二人は長く学校を離れていたため、教頭ーーアーカイブ=システイムによる補習授業を受けていた。

 だがイージスとアニーがたった一週間で補習をクリアしてしまっただけに、アーカイブは少し物足りなさを感じていた。


「どうやらお前たち二人の実力は本物らしい。というわけでだ、これからお前たち二人は私と戦ってもらう。勝てば補習は終わり、負ければあと一ヶ月補習をしてもらう」


 それにイージスとアニーは明らかに嫌そうな表情を浮かべる。

 だがアーカイブは心を鬼にし、拳を構える。


「さあ来い」


「アーカイブ教頭。勝つって、具体的にどうすれば勝ったとなるのですか?それが曖昧だと勝負しても殺すまで続けることになるかもしれないので」


 イージスは言った。

 アーカイブは自分が勝つと過信していたからこそ、その問いを受けて答えに躊躇っていた。


「では私の動きを封じれば君たちの勝ちとしよう。但し制限時間は一時間、その間に私を倒してみせろ」


「分かりました。では容赦なく行かせてもらいますよ」


 イージスとアニーは準備運動をして体をほぐしていた。

 そして準備が整ったのか、イージスとアニーはアーカイブへ鋭い視線を向ける。

 先ほどまで楽しく魔法についての補習を受けていた。だがそんな楽しさとは一変、唐突に変化した雰囲気にアーカイブは驚きを隠せない。


 まるで何度も死地を経験したような眼差しと佇まい。

 アーカイブは後悔していた。この者たちに戦いを挑んだことに。


 次の瞬間、アーカイブの手足はアニーによって氷漬けにされ、首もとにはイージスが剣をかざしている。

 その刹那に、アーカイブは反応することができなかった。


「先生。補習、終わりで良いですよね」


「あ、ああ。異論はない……」


 イージスは剣を魔方陣の中へ収納すると、アニーとともにどこかへと去っていく。

 圧倒的強さと対峙し、アーカイブは驚いていた。


(こいつら……本当に四年生か……)


「アーカイブ。戦ってみての感想はどうだった?」


 アリシアはアーカイブの隣へ立ち、去っていくイージスとアニーの背中を見ながらアーカイブへと言った。


「戦う?何を言っている。俺はあの二人に、手も足も出なかったよ」


 アーカイブは清々しいほどに敗北を宣言した。

 その二人の強さを、アーカイブは真っ向から認めている。


「アリシア。あの二人、将来何になると思う?」


「さあな。たとえ既になりたいものが決まっていたとしても、案外それを守り通すことは難しいものだ。だがもし今のままで在り続けられるのなら、もし今の彼らで在り続けたのなら、その時はきっとーー」


 その答えを聞き、アーカイブは納得した。


「なるほど。だとしたら楽しみだな。あいつらの将来が」



 まだ彼ら彼女らの物語は始まったばかり。

 戦い、抗い、進み続ける彼らの物語に、まだ終着点は遠い。

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