四年生編

一年ぶりの光景

第214話 愛しき日常

 五神との戦いに決着をつけ、イージスはアニーとともにヴァルハラ学園へと帰還していた。

 長きに渡る戦い、約一年の戦い、その激闘を制したイージスたちは、一年ぶりに再会する同級生や仲間と顔を合わせる。


「イージス、やっと目覚めたんだね」


 クイーンは涙ながらにイージスへ駆け寄る。そして隣にいるアニーへ抱きついた。


「アニーも生きててくれた。これでやっと、皆揃った……」


 クイーン以外にも、イージスとアニーを迎える者は多かった。

 一年生の頃からの担任であるカーマ=インドラ、ルームメイトであるスカレアとブック、かつてノーレンスの創った牢獄に入って救い出したスタンプとイスター。

 他にも怪盗団から救い出したアタナシアや同級生のピットとヒーリシア、彼らを多くの者が迎えていた。


「皆、ありがとう」


 イージスは迎えてくれた皆へそう感謝を告げた。

 アニーを奪還し、そして仲間に恵まれたイージスは優しく笑みをこぼした。


(やっと……日常に戻れるんだね)


 彼は心の底からの安堵に喜びを抱いていた。


 五神島での一件は終わったのかというと、それはまだである。

 五神を魔法聖の一人ーーノーレンス=アーノルドが強制転移させた後、その島へヴァルハラ学園の教師や魔法ギルドの者たちが一斉に集まった。

 だが既に戦いは終わった後だった。

 五神へ戦いを挑んだ英雄たち、イージスやアリシア、六芒星の面々、他にもピーチやリーフ、サンダーたちなどという多くの者たちの功績によって戦いに終止符は討たれた。

 しかし、イビル=イーターとパール=ブルーシールドは逃亡していた。さらにゼウ=フリーデンの消息も未だ不明。


 だがどういうわけか、カノン=ギルティは去ることなく、終わった戦いの余韻に浸ることもなく晴れた空を見上げていた。

 そんな彼のもとへ名士四十一魔法師の一人ーーカルナ=サンは歩み寄る。


「久しぶりだね。カルナ」


「ああ。カノン、どうせ君はこの後捕まる。なら私のもとへ来い。研究へ付き合ってくれるのなら君の罪を帳消しにしよう」


「千年魔法教会の特権か?」


「ああ。まあ選ぶのはお前だが」


「では手伝おう。それに、私は研究したいことがあるんだ。罪を償う時間などないしな」


 その後、カノンのした罪は葬り去られ、今ではカルナとともにある事態に備えて研究へ没頭していた。


 そんなことは知らず、イージスは長い戦いからの解放に寮へ戻るなりすぐに眠った。

 それほどに五神との戦いやこれまでしてきた冒険は長かったということだ。



 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



 天空に浮かぶ巨大な城。

 その一室にて、二人の人物は会話を交わしていた。


「ゼウシア様。五神は敗れたようです」


「ということは"鍵"であるアニーも奪還されたか」


「はい、そのようです」


「まあまだ他にも鍵はいる。また新たに世界を脅かす事態を巻き起こすとでもしようか。鍵を探せ。次はあの男を復活させる。かつてノーレンスの牢獄より脱獄した唯一の男を」


 裏で動き出す〈魔法師〉。

 五神の事件はまだ解決はしていない。

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