第213話 やっと二人は再会を期した。
鎖で捕らえられたイーロンは動けず、固まっていた。
「遅かったじゃないか。ヒミコ」
「すまないね。我が友の救出に少し時間がかかったもので」
彼女の隣にはスーザンによって洗脳されていたはずのアーラシュがいた。
「大人しく降参していてください。あなた方は負けたのですから」
「アーラシュ。洗脳を解いたか」
「さあどうでしょうね。そんな話をするよりも良い話をしましょう。スーウェン、そしてイーロン。あなた方を現在魔法聖であるノーレンス=アーノルドが捕らえるぞ」
アーラシュはそう言った。
「やってみろ。スーウェン、今すぐ私たちをーー」
「ーー転移させたあげよう」
イーロンはその場所から消えた。
転移、確かに彼女は転移した。しかしそこは四方八方地獄のような場所であった。だがそこへ転移したのはイーロンだけではない、スーウェンもだ。
「スーウェン、なぜこんなところに転移を」
「私は何もしてないよ……」
「まさか……」
イーロンは恐る恐る振り返った。そこには魔法聖ーーノーレンス=アーノルドが立っていた。
「やあ。ここはどこか?そんなの決まっているだろ。私の魔力で作り上げた牢獄の中さ。さあ、悠久の時を楽しもうじゃないか」
イーロンとスーウェンはその男から感じる圧倒的な魔力量に足を震わししりもちをつく。
「これが……」
「では五神たちよ。裁きの時間だ」
五神の支配に終止符は討たれた。
そして今、五神島に囚われていたその島の人々は解放感に浸っていた。
「キュリオン。今まで迷惑かけてごめんね」
キュリオンの母親は泣きながらキュリオンへと抱きついた。父親はというと無言ではあるものの成長したキュリオンの姿を見て笑みを見せる。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
そしてイージスはと言うと、一年の時を経て再会を期したアニーのもとへと向かっていた。
眠るアニーへ、イージスは言った。
「アニー……」
イージスの声に、アニーはゆっくりと目を開いた。
最初に移ったのは暗雲を払った後の晴天、ではなく五神が討たれたことによって喜びを噛み締めている五神島の住人、でもない。
少しずつピントが合うように視界ははっきりとしていき、そんな彼女の視界に最初に映ったのはかけがえのない一人の少年であった。
「イー……ジス……?」
その言葉を聞き、イージスは胸の奥底から込み上げる喜びに感動していた。
「アニー、俺だよ。イージスだよ。俺は……イージスだよ」
「何で泣いてるの?」
アニーの声を聞き、イージスは無意識に涙を流していた。イージスはそんなことは気にしなかった。
嬉しさと喜びが混じり合うその感情を抱え、イージスはアニーの手を握った。
「アニー、もう二度と離さないから。アニーのいない人生なんて耐えられないから、アニー、俺の側にいてくれ。俺もアニーの人生の傍らにいさせてくれ。俺は、俺はアニーと一緒にいたい」
イージスは溢れるままに感情をアニーへさらけ出す。
アニーは笑みを浮かべて一言、
「うん。私もイージスと一緒にいたいよ」
アニーはか細い声でそう言うも、その一言には様々な感情が込められていた。
ーー喜び、悲しみ、嬉しさ、憤り……、
そんな多くの感情が、アニーの心を埋め尽くしていた。
「アニー、帰ろう」
「どこに?」
アニーはそう問う。
その問いに、イージスは一年分の思いを込めて言った。
「俺たちが最初に出会った場所、ヴァルハラ学園に」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます