第210話 スーウェンの目的
スーザンを前に、余裕綽々と現れたのはアルカン=シエル。
彼女は現在虹色の矢を放ち続け、スーザンへと攻撃を仕掛けていた。スーザンへ攻撃は効いてはいるものの、やはり倒すまでにはいかない。
「やっぱ全力でいかないと無理そうだな。それに、アーラシュもこういう時は全力で戦うだろうし。アーラシュ、あなたの背中を私は追いかけている。だから私は全力で行く」
アルカンの周囲に虹が出現し始めた。
そのせいかアルカンの姿が時々見えなくなったり見えるようになったりと変化している。
虹を纏うアルカンを見て、アリシアは言った。
「アルカン=シエルが全力を出す時、それは虹を出現させた時。つまりは今だ」
虹を纏った彼女は一瞬で姿を消した。まるで瞬間移動したように、だがそうではなかった。
彼女は俊敏な動きで動き回り、スーザンへ一方的な攻撃を仕掛ける。スーザンも抵抗しようと火炎を周囲へ飛ばすも、それらをかわしてアルカンはスーザンの巨大な右翼を斬り飛ばした。
「つ、強い!」
「さすがはアルカン=シエル。アーラシュと並ぶほどの逸材だ」
アルカンは虹を輝かせながらスーザンの周囲を動き回る。
そしてスーザンの体へ次々と矢を撃ち込み、さらには刀傷までもつけている。その速さにイージスは目で追うことはできない。
「もうすぐ終わるな」
アリシアの一言が呟かれた後、それを再現するかのようにスーザンの胸元へ虹色に輝く矢が放たれた。その矢は胸元を居抜き、火炎の鳥ーー朱雀の中にいたスーザンを切り離す。
その光景を見たスーウェンは、地下にて笑みをこぼしていた。
「スーザンが敗れたか。それにスーザンの能力で乗り移った朱雀も使えそうにない。仕方ないから私が食べてあげよう」
地へ転がるスーザンと朱雀、そんな二者の前にスーウェンは瞬間移動により現れた。
彼女は薄れている意識で目を開いているスーザンを見下ろす。
「スーウェン……虹色の女を……」
喋ろうとするスーザン、そんな彼女の顔を足で踏みつけた。次の瞬間、スーザンは姿を消した。
「ごめん。聞き取れなかった」
スーザンを消したスーウェンの行動にはイージスたちは驚いていた。
スーウェンは次に朱雀の首を掴み、持ち上げた。
「君もかなりの力を宿しているみたいだね。まあでも、食べちゃうけど」
朱雀も消失した。
スーウェンは自らの手を眺めて笑みをこぼす。
「まだ百パーセントじゃないな。完全に回復しないと、魔法聖を倒せないだろ」
次にスーウェンが目をつけたのは背後でスーウェンへと歩み寄ろうとしていたシロガネ。
シロガネはスーザンを消した行動を見て、スーウェンの思惑を悟った。すぐにスーウェンへと走りかかって蹴りをくらわすも、その蹴りを青い光の壁に弾かれた。
「良くやったね。パール」
十六司教の裏切りに硬直するシロガネ、そんな彼女へ一人の男は襲いかかる。
シロガネは宙で体勢を立て直して襲いかかってきた男の腹を蹴るも、シロガネの足は何かに食われた。
「お前は……」
「南司教、イビル=イーター。君を喰らうよ。シロガネ」
イビルの腹からには口があり、そこから何かを食らった後のような血がこべりついていた。
「スーウェン、お前……」
シロガネは損失した足を押さえつつ、スーウェンを睨んだ。
そんなシロガネの背後へと回り込み、スーウェンは肩を叩いた。
「消えてくれ」
シロガネの姿は消失した。それとともに、スーウェンの体からは莫大なエネルギーが感じ取れる。それはまるで五神三人分の力。
「さてと、始めようか」
スーウェンは右腕に火炎を纏い、左腕には冷気を漂わせている。
「ようやく力を取り戻せたんだ。是非ともサンドバックになってくれ」
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