第207話 共闘

 五神塔は崩壊し、そこから姿を現したのは五神の一人ーースーザン。

 彼女はどういうわけか朱雀という神獣へと成り変わり、その巨大さ故塔を破壊した。


 五神たちは皆咄嗟に外へ避難したものの、イージスやアリシアたちは崩れたことにより足場を失い、瓦礫の下に埋もれていた。

 だがすぐに瓦礫を破壊して天高くそびえるスーザンを見上げた。


「アリシア先生、これからどうしますか?」


「私に聞かれてもな。とにかく、戦って思ったことは五神と私たちではかなり格の差はあるが、勝てないわけではないということだ。しかし、どうやらスーザンは神獣と一体化することであんな姿になった。それにはさすがに驚いたよ」


 アリシアは剣を腰に提げ、落胆するようにため息を吐いた。

 イージスもスーザンの巨大さを見るに、格が違いすぎると微笑する。

 そこへサンダーとヴァーミリオン、サクヤも疲労している中でイージスのもとへ歩み寄り、そして空高くにいるスーザンを見上げて呆然とする。


「さて、あの化け物はどう倒そうか」


 アリシアはスーザンを見上げ、無理だろとでも言いたげにそう呟いた。

 燃え盛る火炎を纏う巨大な鳥、その容姿たるや難攻不落の巨城。

 攻略方法など皆無、倒せるなどという考えはただの理想である。だがそれでも、彼らは一歩も退くことはない。敗北、彼らはそれを踏み越えようとしていた。


「まあ、、倒せないということはないだろうな。何としてでも勝つ。お前ら、命を懸けて私の背中についてこい」


「アリシア先生、少し我々を見くびってはいませんか。僕も一応、あなたの生徒です」


 イージスは夕焼けの剣を片手に、アリシアの横へ並んだ。


「おいおいイージス、俺たちを差し置いてアリシアの生徒を名乗るのか」


「そうね。私たちは六年間アリシアが担任でしたからね」


 サンダーとサクヤはイージスとアリシアへ並ぶように横並びになった。


「いやいや。サンダー、サクヤ、君たちよりも先輩が後ろにいるぞ」


 アリシアの横にはヴァーミリオンが剣を構えて立っていた。


「私を差し置いてアリーの生徒か。それはいささか傲慢だな。お前ら」


 ヴァーミリオンは剣を構え、アリシアのよこでほくそ笑む。


「では始めよう。スーザンを倒すぞ」


「「「「了解」」」」



 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



「白丸。あんなところにもモンスターがいるぞ。だがあのモンスター……」


 五神島、その島の沖にてリーフは島へ近付こうとしているモンスターを操って島へ引き寄せないようにしていた。

 そもそもこの島はもともと伝説上のモンスターが生息していたとされており、陸地にいたモンスターは五神に全て排除されたが、海の中のモンスターは完全に殺されてはいなかった。

 それらのモンスターを操っている最中に、五神島中央部に出現した巨大な鳥を見て思っていた。


「リーフ。あのモンスターが一体どうかしたのか?」


「ああ。私たちの島に石碑があっただろ。そこにはこう書かれていたんだ。五神に従えし神獣、青龍、白虎、朱雀、玄武、黄龍。そしてそれには続きがあり、一体一体のモンスターについて詳しく言及されていた。その中にこんな文があった」


 リーフは空に浮かぶスーザンを見ながら言った。


「火炎を纏い、空を埋め尽くすようなその巨体、見渡す限りの騒がしさ、その神獣の名は朱雀。あの空に浮かぶモンスターの名は朱雀。そして朱雀は、お伽噺の生物だ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る