第206話 スーウェンの策略

 鬼ヶ島。

 そこでは五神島が襲撃を受けたと聞き、多くの鬼が五神島へと向かっていた。しかしその道中にある島を通ろうとした矢先、鬼の首が飛ぶ。


「何者だ」


 すぐさま六将鬼の一人が鬼の首を斬り飛ばした彼女の前へと現れた。彼女は刀を構え、そして鬼たちへその刀を向けて言った。


「私はストロベリー=ピーチ。ここから先は通さない」


 背にある五神島、そこへは誰も行かせるわけにはいかない。

 彼女はたった一人で何千という鬼の前に立つ。



 ーー五神塔一階

 サンダーとヴァーミリオンは五神の一人ーースーザンへと斬りかかっていた。

 火炎と雷電、それらがスーザンを襲う。だがスーザンは素早い動きで二人の剣をかわしつつ、纏う朱雀の火炎で二人へ攻撃を仕掛ける。


「お前たち人間が、神に勝てると思うなよ」


「お前ごとき人間が、自らを神だと過信するなよ」


「威勢が良いな。最近のガキは」


 一瞬でサンダーの懐へと入り込んだスーザンは、力強い蹴りでサンダーを蹴り飛ばす。しかしそれを予期していたのか、サンダーは剣を振り上げ、スーザンの頬へかすり傷を入れた。それでも尚蹴りはサンダーを吹き飛ばし、壁へ激突させた。


「私にかすり傷をつけたのは褒めてやろう」


 頬を押さえてそう呟くスーザンへ、ヴァーミリオンは斬りかかる。だがその剣をスーザンは仰け反るようにしてかわす。

 だが仰け反るようにしてかわしたせいか、正面から雷の如く斬りかかってきたサンダーの剣での突きをかわせず、スーザンは壁に剣ごと突き刺さり、腹を貫かれた。


「神?そんなものに俺は屈しないぞ」


 スーザンはサンダーの顔へ拳を振るう。しかしサンダーは剣を振り上げて距離をとる。

 スーザンは体を斬られ、血反吐を吐いて膝をつく。


「それがお前の全力か?」


「そんなに見たいなら見せてやるよ。私の全力を」



 ーー五神塔二階

 そこでは黒目のアリシアとシロガネが戦闘を繰り広げていた。二人はほぼ互角の争いを見せつけ、氷と水はぶつかり合っていた。

 ぶつかり合う度に放たれる激しい衝撃、それらに身を激しく疲労させる両者、全てがほぼ互角な両者の戦い。

 それが繰り広げられている最中、床に亀裂が走り始めた。



 ーー五神塔三階

 イージスとカノンは戦闘をしている。

 カノンの魔法具に手も足も出ず、イージスは既に疲弊しきっていた。しかし魔法具ばかりを使って体力を消耗しないカノンは圧倒的力でイージスへ止めをさすようにナイフを振るう。


 だが、床へ、そして壁へ亀裂が入り、突如五神塔は崩れた。

 カノンは咄嗟に魔法具を展開し、空を飛んで上空へ逃げた。そこから見えたもの、それは五神塔を破壊した彼女の正体。


 その姿を見たカノンは言葉も出ず、その姿を見て固まった。

 恐ろしい相貌、そこかた繰り出されるは爆炎の一撃、そこに現れたのは四十メートルはある火炎を纏う巨大な鳥ーー朱雀。


「スーザン……。お前の力だけは面倒だから解放するなと言っていたのにじゃ」


 シロガネは呆れたようにそう呟いた。


「せっかく建て直した五神塔を破壊しやがって」


 その頃五神塔地下の地下にいたスーウェンは十六司教から報告を受けた。


「スーウェン様。予定通り、スーザンが力を使いました」


「では開始だ。神は私一人で十分さね」

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