第205話 それぞれの戦い

 ーー五神塔二階

 そこでアリシアは三人の十六司教と戦闘を繰り広げていた。

 多勢に無勢、劣勢になると思われた戦いであった。しかし、アリシアは三人を一瞬で斬り伏せた。その速さには、三人は唖然としていた。

 速すぎる、その剣をかわすことなど不可能である。そう思われるほどに、アリシアは一瞬で戦いを終わらせた。


「これが……名士四十一魔法師……」


「お前ら、私を少し舐めすぎだ。本当の私の力の前で、お前たちは無力に等しい。感謝しろ。私は君たちと遊んであげたんだから」


 アリシアの目は一瞬黒色に染まっていた。だがすぐに目は碧眼へと戻る。

 上層へと向かおうとするアリシア、その前には一人の女性が現れた。


「これは驚いたんじゃ。まさか一瞬で三人の十六司教を討つなんて考えていなかったんじゃ。その力、君ってさ……」


 喋ろうとした彼女の口へ、アリシアは剣をかざす。だが彼女は平然と話し続けようとした。

 その瞬間、アリシアは剣を突き刺した。

 だがしかし、そこにいたはずの彼女は消えていた。振り向けば、彼女が冷気を放つ手をアリシアの顔へとかざしていた。


「私は五神の一人、シロガネ=ノースじゃ。ここで君を殺すんじゃ」


「私はお前を討つためにここに来た。そのために、力を解放する覚悟もできている」


 アリシアは全身に水を纏い、水流の如くシロガネへと斬りかかった。だが剣はシロガネに触れた瞬間に凍りついた。


「大丈夫じゃ?君の剣」


「水よ」


 凍った剣はすぐに水へと戻り、刃も戻った。

 アリシアは剣を握り、そして覚悟を決めた。


「力を解放しなければ君を倒せない。だから私は、悪魔になる」


 アリシアの目は漆黒に染まった。



 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



 ーー五神塔三階

 そこではイージスと北司教のカノン=ギルティが戦闘を繰り広げていた。

 走るイージスは剣を振るい、カノンへと斬りかかる。カノンは着ていた白衣の内側からナイフを取り出し、そのナイフで剣を受け止めた。


「爆ぜろ」


 ナイフへ剣が触れた瞬間、爆発がイージスを襲う。

 イージスはすぐに距離を取り、ナイフを眺めた。


「魔法具か」


「正解。そして何と言っても、ボクには九十九もの魔法具がある。是非とも味わってよ。そして感想を聞かせてくれよ」


「その前にお前を倒す」


 イージスは地を駆け、天井を走り、壁に足をついて側面からカノンへと斬りかかる。

 カノンは指輪をはめ、イージスの攻撃には動じず動かない。そんなカノンへと剣を振るう、しかし剣は謎の透明な壁に阻まれ、防がれた。


「じゃあ次の魔法具と行こうか」


 カノンは壁を発生させたであろう指輪を外すと、今度は宝石を取り出した。その宝石はダイヤモンド。


「変形」


 宝石はカノンの腕の中で形を変える。

 その隙にイージスはカノンの頭上から剣を振り下ろすも、カノンは腕に形成されたダイヤモンドの拳で受け止めた。


「これはいまいちかな」


 カノンは宝石を解除し、次に拳銃を取り出した。

 カノンは自分の足目掛けて銃弾を放つ。だが銃弾が貫いたのはカノンの足ではない、イージスの足であった。

 イージスは倒れ、討たれた足から血が出ているのを確認した。


「この魔法具はかなりの最高傑作だよ」


「お前、何を……」


「アーラシュの使っていた物体を座標転移させる魔法を使った応用技さ。それに君がこれまで使ってきた魔法にも気になるものがあるんだ。それで魔法具を造らせてよ」


 カノンは平然とイージスへ歩み寄る。

 負けることはない、そう確信しているようだ。


「まだまだ付き合ってよ。ボクの魔法具に」

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