第204話 五神が動く
ーー五神塔一階。
そこで繰り広げられる大攻防。
サンダーVSヴァーミリオン、サクヤVSロイ
ロイは全身に火炎を纏い、拳を振るう度に周囲へと熱を放つ。そのせいか、サクヤが得意とする氷魔法と風魔法はその熱に防がれていた。
素早い動きでロイは何度もサクヤを追い詰める。その度に何度も転移しているため、既にサクヤの魔力は限界が来ていた、そうロイは感じ取っていた。
呼吸を荒くし、膝をついたサクヤ。そんなサクヤへロイは駆ける。
「俺の勝ちだ」
「私の転移魔法は少し変わっていてね、
サクヤへ触れたロイ、だがロイは強制的に転移され、五神塔外の遥か高い空の上に体を投げ出されていた。
ロイの頭上には浮遊魔法で空に浮かぶサクヤの姿が。
「私が魔力を失っていたのは転移魔法のせいじゃないさ。これを仕掛けるためだった」
ロイは拳を振るい、別の波動をサクヤへと飛ばす。サクヤは宙を素早く移動してロイへ手をかざした。
「ロイ、勝つのは私だよ」
ロイを囲むように百以上の氷の刃が浮かんでいた。
「ここへ転移させた瞬間、お前の敗けは決まっていたんだよ」
「無駄だ。俺の熱で全部溶かしてやる」
「負けてたまるか。私はお前に勝つ。そのために全魔力をここに」
無数の氷がロイへと飛び交う。
宙を舞い飛ぶ氷の刃の多くがロイへ触れた瞬間に蒸発する。だが氷の刃は止まない。
何度も何度も刃はロイへと飛び、そしてとうとう氷は足を捕らえた。その一瞬を逃さず、氷はロイの熱を下げ、氷で包み込んだ。
「閉ざせ、氷の檻」
ロイは氷で覆われ、そして地に落ちた。
サクヤはわずかに残った魔力で不安定にも宙を飛び、ゆっくりと地へ着地する。
「私の勝ちだな。ロイ」
サクヤは勝利した。
サンダーは未だ、ヴァーミリオンと攻防を繰り広げていた。
「ヴァーミリオン先輩、なぜあなたは」
「これが私の選択だ。誰にも否定はさせない」
火炎を纏うヴァーミリオンの剣が、サンダーの剣へと重くのし掛かる。その一撃を受ける度に、サンダーは足を後退させていた。
「ヴァーミリオン先輩。俺があなたを」
サンダーは剣を振るい、ヴァーミリオンへと攻める。だがヴァーミリオンの素早い動きに翻弄され、サンダーは攻めても攻めきれない。
まるで動きが読まれている。そう感じた矢先、剣での一撃がサンダーを宙へ舞わせた。
「サンダー、やはりお前はまだまだ後輩だ」
「先輩、魔法剣士は剣士ではなく魔法使い。だから、」
ヴァーミリオンはサンダーへと斬りかかろうとするも、体に電流が流れ、動きが止まった。膝をつき、地に剣を突き立てて立つことが精一杯だった。
「先輩、この一撃で終わりです」
サンダーは着地するや、剣を片手にヴァーミリオンへと飛びかかった。
電撃を纏う剣は振り上げられ、そしてヴァーミリオンへと振り下ろされたーーだが、剣はヴァーミリオンの額の寸前で止まった。
「なぜ……仕留めない?」
「ヴァーミリオン先輩、あなたにはお世話になりましたから。だから俺にはあなたを斬れない。もし斬れるものがあるとするならば、それはあなたを縛っている五神の存在です」
「サンダー。お前は相変わらず、誰よりも強いな」
「当然です。俺はライデン家に生まれてきたんですから」
ヴァーミリオンは剣を鞘へ納め、痺れる足でゆっくりと立ち上がった。
「サンダー、私が十六司教へ入ったのには理由がある。私はこの島で育った。だからキュリオンというもう一人のヴァルハラ学園卒業生とともに十六司教に加入した」
「なるほど。では五神さえ倒せば、あなたは自由ということですね」
「ああ。だが五神は、」
「分かっていますよ。けど今ここで倒さないと、俺は後悔してしまうんです。だからヴァーミリオン先輩、五神を倒してこの島を解放すーー」
「ーーそれはそれは、面白そうだな」
突如音もなく現れた一人の女性ーー五神スーザン。
彼女は全身に火炎を纏っていた。
「あの火炎は……朱雀の……」
ヴァーミリオンとサンダーは咄嗟に剣を抜き、スーザンへ構える。
「五神を倒す?ならやってみてよね。今の私は完全に力を取り戻しているからね」
スーザンを前に、サンダーとヴァーミリオンは鼓動を早くする。
完全復活しているスーザン、彼女に刃は届くのか。
「これが君たちの最終回ね」
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