第201話 リーフ村での激闘

 リーフ村へと入る二人の十六司教。

 ヴァーミリオン=ステラ、ロイ=フー。

 二人は目前に広がるリーフ村を一望し、そして村の中へと踏み行った。その瞬間、一人の男はヴァーミリオンの首もとへ槍を向ける。


「おいおい。入っちゃ困るぜ。十六司教」


「邪魔だな。お前」


「俺はこの村を護る戦士、エクイオス。それ以上入れば首を跳ねる」


 しかし二人は怖じ気づくこともなく、ただ平然とエクイオスを見ていた。


「ロイ、相手をしてやれ。多少怪我をしているのだから、ハンデにはなるだろ」


「了解」


 ロイを背に、ヴァーミリオンは村へと足を踏み入れた。

 エクイオスはヴァーミリオンの首へ槍を振るう。その槍をロイは蹴り上げた。


「おいおい。わざわざ格下であるお前の相手をしてやるんだ。集中しなよ。俺に」


 ロイに食い止められるエクイオス。

 ヴァーミリオンが進む先がリーフの家だと分かった瞬間、目の色を変えて槍をロイへと振るう。


「どうしたのかな。急に本気になっちゃって」


「お前、あの家に何の用だ」


「ゼウを連れ戻しに来たんだよ。彼は十六司教の中でも異質な存在だからね」


 エクイオスの槍を受け流しつつ、ロイはそう言った。

 ロイはエクイオスが槍を振り下ろした瞬間に槍を踏みつけ、エクイオスは槍を動かせなくなった。ロイは槍の上を走り、エクイオスの顔へ蹴りを入れた。


「さあさあ、その程度かな。エクイオス」


 エクイオスは地へ背をつけた。

 既にヴァーミリオンはリーフの家へと侵入し、そしてゼウが眠っている部屋へと入っていた。


「ゼウ、起きろ。とっとと帰るぞ」


 眠たい目を開け、ゼウは目を擦りながらそこに立っているヴァーミリオンを見た。


「誰……ですか?」


「今はそんなお遊びに付き合っている暇はないんだ。とっとと来い」


 ヴァーミリオンはゼウの腕を掴んで引っ張るも、ゼウはそれを拒んだ。

 その行動には違和感を感じ、ヴァーミリオンはゼウを凝視する。

 戦意のない目、しばらく鍛えていないのか、鈍っている筋肉。それらを見てヴァーミリオンの脳裏には一つ憶測が立てられた。


「なるほど。記憶喪失か。面倒なことになってしまったな」


 ヴァーミリオンはため息をこぼし、しばらくゼウを眺めていた。

 だが時間がない。

 ヴァーミリオンは仕方なく拒むゼウを無理矢理抱え、リーフの家から立ち去った。そしてロイのもとへと行くと、既にエクイオスを地に伏せ、圧勝している最中であった。


「ロイ。まさかの展開だ。ゼウは記憶喪失になっていた」


「なるほど。それでしばらくこの村にいたんですね」


「ああ。だからひとまず五神島へと連れ帰る。行くぞ」


 ヴァーミリオンとロイはその村から立ち去るため、水晶玉を取り出した。それはロイがここへ瞬間移動した際に使った道具であった。

 突如、ロイは足を掴まれた。それはまだ意識を保っているエクイオスの手。


「まだ生きていたか。鬱陶しい」


 ロイはエクイオスを蹴り飛ばした。

 地を転がるエクイオス。ヴァーミリオンは剣を取り出し、それをエクイオスの首へと振り下ろす。その瞬間、


 雷鳴とともに防がれたヴァーミリオンの剣、その先には電撃を纏う剣があった。

 その剣を握る者はヴァーミリオンを見ながら言った。


「先輩。そこまでですよ」


 そこにいたのは、そこで剣を受け止めていたのは、


「サンダー、」


「お久し振りですね。ヴァーミリオン先輩」


 サンダー=ライデン。

 彼はヴァーミリオンの剣を弾き、直ぐ様ヴァーミリオンの腹部へと剣を進める。


「相変わらず速いな」


 ヴァーミリオンへと進むサンダーの剣へ、ロイは側面から拳を入れる。しかし突如瞬間移動し、瞬間移動した瞬間に腕を掴まれ、そのまま横たわって地に伏せた。

 ロイの上にいたのは、サクヤ=フブキ。


「大人しくしてな」


 剣を止める者は誰もいない。

 その状況下で、剣はヴァーミリオンの腹部へ……


「シールド、展開」


 青白い壁がサンダーとヴァーミリオンの間に隔てられた。

 それとともに現れたのは十六司教。


「今十六司教がいなくなっている中、死んでもらうのは困りますよ」


「サンキュー。パール」


「守護者ですから。とりあえず帰りますよ」


 ロイを押さえつけていたサクヤであったが、どういうわけか瞬間移動させられ、サンダーの隣に移動した。


「反転魔法か」


 驚くサクヤへ、白衣に眼鏡、そしていかにもだるそうにしている男は言った。


「ボクはカノン=ギルティ。君の転移魔法には少し興味はあるけど、今は逃げさせてもらうよ」


 ヴァーミリオンたちは水晶玉を地面へ叩きつけると同時、姿をくらました。


「ヴァーミリオン先輩。また逃がしてしまいましたか」

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