第199話 童話島は落ちた

 ヒノカミたちは起き、プリシラとシロナとの再会に笑みをこぼして抱きついた。

 食卓では、〈六芒星〉とアリシアがいたが、リーフは未だ部屋で寝込み、イージスはどこかへ出掛けていないという状況であった。

 そんな状況ではあるが、プリシラはキョンシーズの言っていた計画を話した。


「キョンシーズは現在いない十六司教の穴を埋めようと、この島にいる者を仲間にしようとしている。恐らく呪いによって」


「呪いか。厄介ですね」


「だから速くキョンシーズを止めなければ、この島は奴らによって支配されるかもしれない。そうなる前に、奴らを倒したい。だから協力して欲しい」


 プリシラは言った。

〈六芒星〉の皆は当然のように頷き、アリシアも首を縦に振った。しかし、数が少ない。


「協力はする。だが相手は十六司教二人。もっと協力者が欲しい」


 アリシアの発言に、ふとヒノカミは思い出す。


「そういえば桃神村にピーチさんがいましたよね。彼女に頼めば戦力になってくれるのではないでしょうか?」


「そうだな。それにもしキョンシーズが作戦を開始していたとしても、仲間にしているのは一人や二人だろう」


「なぜですか?」


「仲間にするのには時間がかかるか、もしくはその呪いをかけるには条件がある。それにお前ら二人には死の呪いがかけられている。十六司教の穴を埋めたいのならお前らを仲間にするはずだ。それをしなかったということは、そういうことの可能性が高い」


 アリシアはそう言い、二人を見た。

 その説に確信はない。しかし、間違っているということもない。


「ピーチの説得には私が行く。そして今夜、キョンシーズが向かったと思われる雲斬村へ向かう」


 そう言い、プリシラはシロナを連れて桃神村へと向かった。

 アリシアはイージスの帰りが遅いことを気にかけてはいた。しかしすぐに夜は訪れ、作戦が開始しようとしていた。

 プリシラはピーチ=ストロベリーを連れてやってきた。


「ではこの島を守るため、キョンシーズを討つ。行くぞ」


〈六芒星〉、アリシア、ピーチはいざ雲斬村へと向かう。

 だがそこへ着くなり彼らは騒然とした。


「燃えてる……」


 村はなぜか燃えており、村人たちは混乱に陥っていた。さらにはその村にモンスターが出現し、村人を襲っていた。

 雲斬り伝説の英雄、雲斬丸は一人奮闘するも、圧倒的な数の多さに苦戦を強いられていた。


「助けに行くぞ」


 プリシラたちは一斉に村へと駆ける。

 だがそれを感じ取ったのか、彼女らの前にはロイ=フーが拳を構え立ち塞がった。拳に纏われているのは風、ロイは俊敏な動きで早速アリシアへと攻撃を仕掛けた。しかし、拳はアリシアが瞬時に抜いた剣に弾かれる。


「一番厄介な相手はとっとと始末したかったが、そうは行かないよな」


「お前ら。こいつは私一人で十分に勝てる相手だ。だから雲斬丸がキョンシーズに操られる前に奴のもとへ行け」


 プリシラたちはその言葉通り、ロイの横を通り雲斬丸のもとへと向かう。そうはさせまいとロイは攻撃を仕掛けるが、アリシアは圧倒的な速さでロイの腕を貫いた。


「無駄無駄。私から逃れようだなんて」


 ロイはその強さに身を震わした。

 アリシアは遠目にプリシラたちを見ていた。


 モンスターが雲斬丸のもとへと向かわせないように壁をつくっていた。そのせいかプリシラたちは足止めをくらう。


「なあロイ、あのモンスターは呪いで操られているのか?」


「どこで知ったか知らないけど、正解だよ。それに雲斬丸を助けるとか言ってたけどさ、無理だよ。もう」


 その笑みには何か確信があった。

 その言葉通り、モンスターに足止めを受けている間にもキョンシーズが雲斬丸の前に現れた。


「何者だ。お前は」


「ボクはキョンシーズ。君を新しく十六司教に迎えに来たよ」


「何を言っているか分からんが、ここでお前は終わりだ」


 雲斬丸はキョンシーズへと剣を振るう。その剣はキョンシーズの腹を貫く。


「呆気ないな」


「それはこっちの台詞だよ」


 腹を貫かれても尚、キョンシーズは雲斬丸の顔へ手を当てた。


 その様子を見ていたアリシアは、水の如く雲斬丸のもとへと向かおうとするも、それをロイに阻止される。


「諦めろ。もう無理だ」


「邪魔だ」


 勢いに任せてロイを振り払おうとするアリシア、しかしロイはアリシアを先には行かせない。


「キョンシーズが操れるのは魔法の才能がない人物。そしてこの島の伝説の多くが魔法を使えない人物。だからさ、一瞬で彼は操られた」


 この瞬間、キョンシーズの手によって、雲斬丸は落ちた。


「さあ、新メンバーを歓迎しよう。十六司教が一人、雲斬丸」


 雲斬丸は理性を失ったように剣を握り、そして村人を睨んでいた。









「あ、言い忘れてたけどさ、童話島は既に落ちてるよ」

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