第196話 呪う者
真夜中の童話島。
その島にある幾つかの村の一つーー雲斬り村。
そこには雲を斬るという雲斬り童話という童話に出てくる架空の村であった。
「童話が実在する島、童話島。本当に面白いな。だが童話を知っていれば負けることは百パーセントない。そうだろ。ロイ=フー」
「キョンシーズ、俺はお前と馴れ合うつもりはない。ただ命令されたから仕方なくお前と行動を共にしているだけだ」
「ボクだって一人で行きたいよ。けどこの半月で半数程十六司教が倒された、もしくは脱退した。これが誰の仕業なのか、そんなことはどうでも良い。今最優先すべきことは、この島にいるお伽噺の主人公を十六司教として仲間にすること」
ロイは隣にいるキョンシーズの服装に視線を向けた。
白と紫を基調としたデザイン、それに不気味な帽子を被っており、なぜか顔には札を貼っている。明らかに視界は塞がれているが、前が見えていないということはないようだ。
「で、この村に来たということは狙いは、」
「ああ。雲斬り伝説の英雄、
「だがな、確か雲斬丸は短期で暴れん坊という話じゃないか。そんな奴をどう仲間にしろと?」
「心配性だね。でも大丈夫。呪いの札があるからね……」
キョンシーズが腰から一枚の札を取り出した瞬間、その凍てつく矢によって撃ち抜かれた。札は凍り、そして割れた。
「またですか。〈六芒星〉」
キョンシーズの背後に立っていたのは、冷気を放つ弓を構える白髪の女性と、マイクを片手に持ち、もう片方の手でピースをしている女性。
「凍てつく少女、シロナ=ホワイト。それに若者に大人気のアイドル、プリシラ=アイドリー。何度追ってくれば気が済む」
キョンシーズは苛立ちを表に出し、二人を睨んでいた。
「ねえねえ十六司教のお二人、あなた方がこれから何をしようとしているのか、それを全て聞いてしまいました」
「それだけは阻止させてもらう」
シロナは矢を弦に交えて構え、プリシラは喉を押さえて発声をする準備も万端であった。
「目的を知られたのなら口を塞ぐしかないな。ロイ、やるぞ」
「はいはい。面倒だけど、やるしかないよね」
ロイはやる気を露にはしないものの、首を捻ったり肩を回したりし、準備運動をして戦う準備をしていた。
そしてキョンシーズは無数に札を取り出して、それらをプリシラとシロナへと投げた。
「凍てつけ」
札はシロナの視界に入った瞬間に凍りつく。
「ロイ、気をつけろ」
「分かっていますよ」
ロイは小柄な体型を活かし、身軽な動きで動き回り、そして一瞬にしてシロナの頭上へと移動した。そして足を振り上げ、勢い良く振り下ろすが、蹴りは音の壁に弾かれた。
「アイドルか」
「アイドル舐めんな」
宙で体勢を崩したロイへ畳み掛けるように、音の衝撃がロイを襲う。その攻撃に耐え、ロイはキョンシーズの横へ着地した。
「さすがに強いな」
「ああ。〈六芒星〉の中でも、この二人はかなりの手練れだ。本当に、厄介だね」
だがキョンシーズはそう思ってはいないようだった。
その言葉には感情など籠っておらず、強いて言うなら殺意しか乗っていない。
「
キョンシーズは顔に貼っていた札を外した。そこでキョンシーズの顔は露になった。
その顔を見て、プリシラとシロナは驚いていた。それにロイも素顔を初めて見たのか、その顔には驚いていた。
「顔が……ない……!?」
キョンシーズの顔は真っ白で、目も口も鼻もない。
「ボクはね、昔に滅んだ一族、カオナシ家の生き残りだよ。ボクはキョンシーズ=カオナシ」
キョンシーズは驚く様を見てさぞかし楽しそうに微笑んでいた。
「ボクの一族は昔からこんな顔だったから周りから気持ち悪いって思われていた。だから学校になんか行けず、山奥でひっそりと魔法の練習をしていたんだ。だけれどボクたちは見つかって、そのまま殺された。
それ以来ボクの内には沸き上がる何かがあってね、それに支配されるようにボクを止めることはもう誰にもできなくなっているんだよ。
ボクはカオナシ家の生き残り、そして呪いの天才さ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます