リーフ村編

第195話 ゼウという存在

「さて、次はどの島へ向かおうか」


「もし良ければ、童話島に行きませんか?」


 アリシアの問いに真っ先に答えたのはマトリッカであった。


「何かあるのか?」


「実はあの島は五神島から最も近い島のため、十六司教が良くあそこで密会をするとダークネスは口を滑らせていました。ですのでもしかしたら十六司教を倒せるかもしれません」


「なるほど。では次は童話島を目指そう。それに五神が完全復活するまで時間がない。急ぐぞ」


 アリシアたちは駆け足で童話島へと向かった。

 童話島はかなり大きく、十以上の村や集落が存在した。


「リーフ村、そこに行ってみましょう」


 イージスは言った。

 アリシアは頷き、リーフ村へと足を運ぶ。


 それと同時刻、ある者たちもリーフ村へと足を踏み入れていた。


「ねえ、この島には何があるかな」


「どうだろうな。これまで多くの島を探検してきたが、この島はかなる異質な雰囲気が漂っている。気をつけるぞ」


「うん」


 そんなことには気付くことなどできず、リーフ村へついたイージスは久し振りの光景に目を輝かせる。


「イージス、久し振り」


 最初に迎えて来てくれたリーフ。

 それを見てアリシアは確信した。そしてイージスの耳元で囁いた。


「やらしいな。イージス」


「そ、そんなんじゃないし」


 イージスは振り返ってアリシアへ言った。

 その様子を見ていたリーフは首を傾げ、イージスを不思議そうに見ていた。


「どうかしたの?イージス」


「何でもない。ところでリーフ、この島で怪しい人物とか見かけたりしなかったか?」


「怪しい人物?見たことないけど……どうかしたの?」


「実はだな……」


 イージスが話そうとした時、一人の少年が話に割り入るように入ってきた。


「リーフお姉ちゃん、この人たちは?」


 その少年を見た瞬間、ヒノカミ、スイリュウ、マトリッカ、アリシアは身構えた。

 イージスは戸惑い、振り返った。


「どうかしたの?」


「その少年は、十六司教の一人、ゼウ=フリーデンだ」


 イージスも動揺し、それとともにリーフも動揺を見せた。

 その様子から察するに、ゼウという少年が十六司教の一人であるとは知らなかったらしい。


「リーフ、その少年は……」


「ゆっくり話をしよう」


 リーフはイージスたちを家へと招き入れた。

 リーフはゼウをベッドで眠らせ、イージスたちと話をする。


「ゼウはね、この島に来た時は記憶喪失になっていたんだよ。だからこの島で見守っているんだ。でもゼウは本当に良い奴なんだ。あいつうは本当に」


「たとえそうだとしても、もし記憶が戻れば最悪の事態になる可能性が高い」


「最悪の事態?」


 アリシアは腕を組み、考えていた。


「ゼウ=フリーデン、奴にはこんな異名がつけられていた。"殺戮者"」


 その異名だけでも十分に理解できた。

 ゼウがこれまで何をし、そしてゼウになぜアリシアたちが恐れているのかを。


「ひとまず話は後だ。今はゼウをなるべく外に出させないようにしてくれ。もし十六司教に見つかれば、間違いなくゼウは記憶を取り戻す。それまで私たちはこの島に滞在する」


 今日、アリシアたちはリーフの家に隣接する家屋で眠る。

 リーフは寝付けず、真夜中に浮かぶ月を眺めてため息を吐いた。


「私は……どうすれば良い」

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