三日月島編
第190話 暗闇に支配された島
新たに一人を仲間に加えたイージス。
仲間はアリシア、ヒノカミ、そしてスイリュウと一人増えた。
「次にどこの島へ向かいますか?」
「そうだな」
彼らが考えている最中、島にいた一人の男は彼らへと歩み寄っていた。
その男の正体は十六司教の一人、キュリオン=クリンゲルであった。
「五神からの命令だ。お前らを今この島で捕らえろと命令が来た。前にも言った通り、俺は命令が来たのなら従う。それだけだ」
キュリオンは肩にあの狐を召喚し、さらには他にも無数に召喚獣を召喚していた。
空を飛ぶ鳥のような召喚獣にサイのように鋭い角を持った召喚獣、さらにはリザードマンのような召喚獣などなど、無数の召喚獣を操っていた。
「さすがの魔力、これぞ十六司教というわけか」
「イージス、先に行っててくれ」
アリシアは剣を抜き、水を纏ってキュリオンの前に立ちはだかる。
「いや、その必要はない。アリシア」
その声の主は、紅眼族の長、プロミネンスであった。
彼女は二本の槍を構え、アリシアの横に並んだ。さらにはアクアやフレイム、他にもホノオなど、そうそうたる面々が駆けつけていた。
「お前ら、早く行きな」
アリシアは剣を納めた。
「仕方ないね。任せたよ。プロミネンス」
アリシアたちはほうきに乗り、島から去っていった。
それを確認したキュリオンは、召喚していた召喚獣を皆消した。
「何のつもりだ?」
「俺に下された命令は
「なかなかに面白いな。君は」
「十六司教の多くがやらされている、と言った方が良い。まあ全員ではないが。だからいつか五神が倒されたのなら、きっと世界は大きく変わる。任せたぞ。真の魔法使いよ」
イージスらが向かった島は三日月の形をしている島ーー通称三日月島。
その島には朝は訪れない。
なぜならその島に生えている宵闇の木という樹木が日の光を吸い込んでいるからだ。だからその島では明かりはないーーはずだった。
「アリシア先生、ですがあそこ、光っていませんか?」
イージスが指差していた場所は確かに光っていた。
アリシアは不思議に感じ、そこへ、上陸することとなった。そこへ到着するなり、一人の女性を見つけた。
「マトリッカじゃないか。こんなところにいたんだね」
光の正体は彼女が纏っている電撃だ。
彼女のことを知っているだろらしく、ヒノカミとスイリュウは真っ先に彼女へ歩み寄るも、触れはしない。
彼女が電撃を纏っているから当然のことだろう。
「ねえマトリッカ、こんなところで何をしているの?」
「それは……」
ヒノカミが投げ掛けた質問にマトリッカは固まった。
「ひとまずこの島を去りましょう。十六司教はいなそうですし」
だがマトリッカは言った。
「嫌だ」
マトリッカは島から去ろうとはしていなかった。
「マトリッカ、どうしたの?」
「べ、別に……なんでもないよ」
そう言い、マトリッカは宵闇に包まれた島を駆け回り、雷の如く去っていった。
追いかけようと走るヒノカミとスイリュウ。二人の姿は宵闇の中ではすぐに見失ってしまう。だからイージスとアリシアは追いかけようと走るも、その前には黒いローブを着た謎の者が立ち塞がっていた。
「そこを退いてくれ。仲間とはぐれてしまう前に」
イージスはそう言ったが、アリシアはイージスの手を掴んで後ろへ引っ張った。
「アリシア先生、何を?」
「イージス、この島は無人の島なんだよ。それはこの島に伝わるとある伝説があるから。一日以上この島に滞在していた場合、この島に体を奪われ、影だけがこの島を徘徊すると」
だが目の前にいる者は確かに実体があった。
暗闇に少しずつ慣れてきていたイージスの目にははっきりと実体を持つ腕が見えていた。
「じゃあこの人は……」
「もし実体を保つことができるのは、そんな悪魔のような魔法をこの島にかけた人物ということだ」
「正解」
そう言うや、その者はフードをめくった。
そこで見えたのは明らかに実体のある彼女の素顔であった。
「私は十六司教の一人、ダークネス=エンダー。五神の命令により、ここでお前らを捕らえに来た」
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