第187話 紫色
処刑されるのは明日。
今は真夜中、誰も見張りがいない中、アクアは水を檻の外に水を流し、その水を地上の水に浸透させ、そのまま紅眼族の領土まで運ばせた。
「あの時スイリュウを見て足を止めていた少年に伝えられれば、もしそれができれば処刑を防げるかもしれない」
アクアは水を運ぶが、突如水は火炎によって貫かれ消失した。
「何だ、この水。とうとう本気で碧眼族が攻めに来たか。まあ確かに、決着をつけたくなるよな」
そう呟いたのは地面を燃え盛る槍で突き刺しているプロミネンスであった。
「族長、どうかされましたか?」
「ホノオ。皆に知らせてくれ。明日の明朝、碧眼族の村を襲撃する」
「はい。ですが……良いのですか?」
「ああ。今日をもって我々紅眼族が勝利する。決着をつける時が来たようだ」
プロミネンスら紅眼族は真夜中に戦闘に備えていた。
飯を食い、武器の整備をし、そして準備運動を始める。
「奇襲にて我々の偵察を仕掛けたんだ。あいつらは攻められることにも備えているはずだ。こちらも正々堂々あいつらを潰すぞ。今日こそこの戦いに終止符を討つ。開戦だ」
後日の明朝。
碧眼族長クリスタルはスイリュウの家を破壊して突入し、そしてスイリュウを捕らえ、街の広場の中心に氷の柱を立ててそこにスイリュウを吊るした。
「スイリュウ、お前は父と母のことを覚えているか」
「覚えてない」
小さな声でうつ向きがちに言った。
「そうか。なら教えてやる。お前の父は我々と同じ碧眼族だ。だがあの男が選んだ女は奴ら紅眼族だった。つまりお前は碧眼族と紅眼族のハーフなんだ」
「母さんが……紅眼族……」
「それがお前を殺す意味だ。お前ら、槍を構えろ」
クリスタルの背後には投てき槍を構えている数名の兵士がいた。
「ここで終わってくれ。これで恥さらしは消える。さようなら、スイリュウ=パープル」
クリスタルが手を振り上げると、背後にいた兵士たちは一斉に槍を投げるように構えた。
「ごめんヒノカミ。私はもう、アーラシュ様のもとには戻れない。だってこんなにも弱いままであの人の役に立てなかった」
スイリュウは涙ぐみ、目を瞑り死を待った。
クリスタルが手を振り下ろした瞬間、槍は投げられ、スイリュウの体を貫くーー寸前で放たれた矢が全ての槍を撃ち落とした。
「何が……どこの誰だ?」
クリスタルは周囲を見渡す中、崖の上に数人の影があるのを見た。
「スイリュウ、助けに来たぞ」
その人影の先陣にいたのはヒノカミであった。
槍を撃ち落としたのはヒノカミの矢であることは間違いないだろう。
「どうして助けた。ヒノカミ」
「なあスイリュウ、死にたかったら自分で死ね。お前は自分の体を他人に預けられるほど弱いのか」
スイリュウを救うため、ヒノカミは現れた。
イージスやアリシア、そして紅眼族の仲間を率いて。
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