第185話 キュリオンの助け

 肩に狐を乗せた男は突如としてヒノカミへ魔法を放った。

 放たれた魔法は火属性の魔法、咄嗟に弓を構えたヒノカミは魔法で出現させた火の矢を引き、放つ。

 火属性魔法と火属性魔法はぶつかり合い、消失する。


 ヒノカミが放った矢は一つではない。矢を構えた瞬間、既に矢を二つ放っていたのだ。その矢は妙な軌道をし、その男の背中を貫くーー寸前で肩に乗っていた狐は矢を飲み込んだ。


「相変わらず異次元な胃袋をしてやがる。その狐は」


「この子は召喚獣のフィックス、そして俺はキュリオン=クリンゲル」


「自己紹介している暇があるわけないだろ」


 さらに矢を放ったヒノカミ。

 キュリオンの四方八方を囲むように無数の矢は舞う。だが狐が口を開くと、そこに全ての矢は吸い込まれた。


「俺とお前じゃ決着はつかないんじゃないか」


「俺が倒されることがない。だけど君は弱いから、負けるよ」


 突如ヒノカミの足を貫いた火炎の矢、その速さは見きれるはずがなかった。

 まるで矢だけ瞬間移動したような、そんな速さに唖然とする。さらには腕、腹を貫かれ、ヒノカミは地に伏した。


「君じゃ勝てない。この俺には」


 キュリオンは手に剣を創造し、それを振り下ろす。


「そこまでだ。十六司教」


 アリシアは瞬時に剣を抜き、キュリオンが振り下ろした剣を弾き飛ばした。


「十六司教か……。一応言っておくが、俺はやりたくて五神の下についているわけではない。それにお前たちが五神さえ倒してくれれば五神など辞めてやるさ」


「じゃあなぜ五神をしている」


 剣を向けて問うアリシア、それに怯むことなくキュリオンは言う。


「俺が生まれた島が今五神のいる五神島、だから俺は十六司教からは抜けられない。でないと、島の人は殺されるから」


「では戦う気はないのだな」


「ああ。だけど五神様から命令が来た時は、容赦なく俺はお前らを襲う。構わないな」


「その時は安心しろ。私が一瞬でミジンコにしてやるから」


 それでキュリオンとの話は終わった。

 戦う必要のない相手とは戦わない、にしてもヒノカミは重傷を負い、しばらくこの島からは離れられない。

 しばしこの島へとどまることとなり、そして明日の戦いにイージスは参加することになった。


「何で俺が参加しなくちゃいけないんですか」


「安心しろ。紅眼族にも強い奴はたくさんいるから。だから彼らに戦いを任せても構わないぞ」


「まあ戦いますけど、さっきアリシア先生がしていた話では紅眼族と碧眼族は皆アリシア先生に匹敵する力があるじゃないですか。そんな相手にどう戦えというんですか」


「がむしゃらにいけ。それに私の動きを見抜けるようになったのだろう。なら生き残れるさ」


 そう言われたが、イージスは不安を隠せなかった。

 すぐにその日はやってきてイージスはなぜか紅眼族の長の隣に立たされていた。


「イージス、俺が槍を掲げた瞬間、中心にある街まで走れ。そしたら碧眼族を倒してしまえ。分かったか」


「は、はい……」


 そしてプロミネンスが槍を掲げるとともに、彼は走り出す。それに続き紅眼族の者たちも走り出した。その気迫に圧されるかのように、イージスも走るしかなかった。


「くそ、こうなったらやけくそだ」


 中心にあった街へ突入、その後そこにて戦闘は始まった。

 イージスは剣を握り、敵へ備えていた。そして水流の如く軌道を描く矢を感じ取り、剣で斬る。その後姿を現したのは、弓を構えたスイリュウ。

 彼女を見るや、イージスは思った。


「〈六芒星〉の!?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る