第183話 魔女の復活に幕は閉じた

 グレイト司祭の野望は阻止された。

 シャリオはぐっすりと眠っているスフィアを抱え、仲間とともに去ろうとしていた。


「なあシャリオ」


 シャリオは足を止めた。

 そして振り向くや、グリモワールの姿を見た。


「グリモワール、どうかしたか?」


「いや、何でもない」


「そうか。じゃあ俺から言わせてくれ。なあグリモワール、いつまでも母様のことを引きずっているんじゃねー。それに自分の汚名で母様が背負った罪を背負おうとすんじゃねーよ。そんなことは誰も望んでいない。だからグリモワール、自分が生きたいように生きろ。これからは、そうしろよ。グリモワール」


 シャリオはまた前を見て歩き出した。

 去っていくシャリオの背中へ、グリモワールは呟くように「ありがとう」と言った。シャリオは手を振り上げ、去っていく。


 真っ先にグリモワールが向かったのは、マレウスがいる場所であった。


「なあマレウス、俺は十六司教を辞めるよ」


 グリモワールは変わっていた。

 成長した姿を見るや、マレウスは笑みをこぼして返答する。


「ああ。良い答えだ」


 この日、十六司教の座から二人の魔法使いは脱退した。

 グラン=グリモワール、そしてマレウス=マレフィカルム。

 彼らは正しい選択をしたと誇りを持ち、そしてその街の象徴であった十字架を破壊した。


「もういらないよな。魔女狩りは終わりだ」


 魔女教は解散した。

 筆頭であったグレイト司祭は島から追放され、ノクスはラビットたちを引き連れて旅に出るようだ。


 炎上島での一件は終了した。


 それを見届けたイージスは、アーラシュが率いる〈六芒星〉の一人ーーヒノカミへと話しかけていた。


「なあヒノカミ、他のメンバーはいないのか?」


「ああ。生憎俺だけだ」


「そうか……」


「そんなことよりもだ、お前が連れているそこのべっぴんさんは誰だ」


 ヒノカミが言っていたのはイージスの背に立っていたアリシアのことであった。


「紹介しろよー」


 想像以上に呑気な正確にイージスはやや頬を緩めた。

 見た目は強さに執着する気高い戦士、と言った感じであったが、どうやらそうでもないらしく、気軽に接しられる明るい人、という印象だ。


「アリシア先生、実は彼はアーラシュという名士四十一魔法師の仲間でして、それで五神を倒すのに協力してくれる存在です」


「なるほど。ではこれからともに旅をすることになるわけか」


 アリシアはヒノカミの前へと歩み寄る。


「初めまして。私はアリシア=コウマだ。よろしくな」


「俺はヒノカミ=クリムゾン。よろしくお願いします」


 ひとまずこ挨拶を終え、アリシアは話し出す。


「では次にどこの島へ向かうかだ。なるべく十六司教がいる島へ行きたいが……」


「そういうことなら一つだけ知っていますよ。五神がいる島を」


 ヒノカミは自信満々で言って見せた。

 それにアリシアは聞き返す。


「一体どこの島なんだ?」


「その島は二種族が常に競い、争う島。その目的は領土でも財宝でもない。ただどちらが強いか、それをはっきりとさせるためだけに戦っている。碧眼族と紅眼族の島ーー紅碧島」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る