第179話 魔女が蘇る
島が夜に包まれた瞬間、上空から魔女教の魔法使いが一斉に降下する。降下してくる彼らを狙うように、既に陣を引いていた兵士たちは矢で次々と魔法使いを撃ち落とす。
だがそれと対等的に、魔女教たちも魔法で地上にいる兵士たちを次々と倒していった。
混乱と激闘に巻き込まれる市民たちは、安全な場所を求めて逃げ惑う。
そんな状況に陥っても尚、グラン=グリモワールは冷静に上空を見つめ、静かに呟いた。
「やはりグレイト司祭はいないか。まあ無理もない。老人に戦闘は無理だろうしな。それにしても、夜にする理由が分からんが」
考えているグランの背後を狙い、既に地上へ足をつけた魔法使いたちは襲いかかる。
書に目を向けていたグランであったが、魔女教徒がグランへと触れる寸前、地面から木が生えて魔女教徒たちを捕らえた。
「無駄だよ。全方位防御、私のこの固有魔法に対抗できるはずがないだろ」
振り返ったグラン。
彼を狙い、今度は上空から爆破魔法が降り注ぐ。だが全て自動的に発生した光のシールドによって防がれる。
「無駄だと言っているだろ」
光の剣がグランの背後へ出現し、その剣は光速で移動し上空の魔法使いを串刺しにする。
血の雨が降る中、グランはマレウスが仕事をしているかどうか周囲へ視線を向けた。
「ん?マレウスが誰かと戦っているな。誰だ?あれは」
マレウスは家屋が連なる屋根の上を駆け、剣を握る一人の女性と戦闘を繰り広げていた。
女性の軽快な身のこなしは、明らかに素人ではない。戦闘に慣れている者の動きだ。
「お前、何者だ?」
「さあ、教えられないね。それは」
マレウスが戦闘をしていたのはアリシア。彼女は水を纏わせた剣を握り、火属性魔法を得意とするマレウスと有利な戦闘をしていた。
水と火、アリシアの水がマレウスの火を打ち消す。
マレウスは撤退しようと後退するも、それをさせないかにようにアリシアは水流のごとく素早い動きでマレウスを逃しはしない。
「マレウス=マレフィカルム、君の相手は私だ」
アリシアがマレウスを止めている最中、一人の少年はグランのいる広場へと向かっていた。
広場にいるグランは十字架に吊るされているノクスを護りつつ、鎖で腕を縛られている魔女教徒へ手をかざす。
「逃がすくらいなら殺すまで。それが魔女狩りだ」
非情なまでの正義、それにマレウスや兵士たちは違和感を感じつつあった。
ーー彼は正しいのか。
だが力は正義、今ここで一番強いのはグランだ。
どれほどの群れを率いようと、圧倒的一には敵わない。
「足が止まっているぞ。魔女教徒ども」
「そりゃそうだろ。彼らの目的である彼女の奪還が成功したんだ」
グランはノクスが縛られているはずの十字架を見た。だがそこに縛られているはずのノクスはそこにはいない。屋根の上を見ると、橙色の剣を持った一人の少年がノクスを抱えていた。
「お前、魔女教徒じゃないな」
「僕はイージス。十六司教の一人、グラン=グリモワール、君を倒しに来た」
イージスはノクスを腕から降ろし、剣を構えつつグランの前へと立った。
「なぜお前たちは五神に仕える?」
「イージス、それを説明しても君では到底理解できない。だから説明する義理はない」
「なら倒して吐かせる、それで良いだろ。グラン」
「さあ来い。俺を倒してみろ」
イージスとグランが戦闘を始めると同時、一人の男は密かに進めていた計画を実行に移そうとしていた。
「生け贄が無数にある戦場において、復活の儀式は最も成功率を高める。それに十六司教二人もいる。ようやくあなた様に会えますね。魔女ーーアブソリューラー」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます