第176話 忌
イージスが炎上島へ来てから二週間。
アリシアの剣をかなりの頻度で避けるようになっていた。
「さすが、成長が早いな」
「ありがとうございます」
イージス自身も成長を実感していた。
アリシアの剣が目隠ししていても時々見えているかのようにかわすことができるようになった。
「では今日は街に食事でもしに行こう」
街を歩くアリシアとイージス。
街はかなり発展しており、高級街や食道など様々な施設が混在していた。
食道にあったレストランへ入り、アリシアとイージスはそこで食事をしていた。
「アリシア先生、一年も五神たちを野放しにして大丈夫なのでしょうか?」
「その件に関しては抜かりなく調べたが、五神たちが完全に復活するには一年かそれ以上の月日がいる。それに完全復活とはいっても力の多くがこの世界中に回収できないようあらゆる養分となって散っている。だから全盛期の力の半分の力しか出せない五神なら倒せるってこと」
「それなら修行を積めば倒せる可能性が高いですね」
「しかも既に五神の一人、イーロンは倒している。残りの四神さえ倒せば、ここら一帯の五神の支配は終わる」
「強くならないと、いけないということですね」
「ああ。強さがなくては生きていけない。それがこの世界だ」
アリシアは戦いに身を投じてきたからこそその発言を迷いなく言えた。
イージスは戦うことの覚悟をアリシアから感じた。
「ではまた修行に行くぞ」
アリシアとイージスは店の外へ出た。すぐそこには石畳の歩道があり、市民たちはそこを歩いていたーーはずだった。
だが今は状況が違う。
歩道にて、魔法使い同士が戦いを繰り広げていたのだ。
「グラン=グリモワール!」
そう呟くアリシアを聞き逃さなかった。
グラン=グリモワール、その名は十六司教の名で間違いない。
「イージス、よく見ておけ。あの男の戦い方を」
グリモワールは剣を二本構える女性を前に、武器は持たず魔道書を平然と持ち女性と渡り合っていた。
女性が剣を振り下ろす度、グリモワールを護るように光の盾が出現する。何度攻撃しても何度攻撃しても女性がグリモワールへ攻撃を与えることはない。
「グラン、これが貴様の正義か」
「ああ。ノクス、君も一週間後の公開処刑で死んでくれないか」
「残念だったな。それは無理だ」
「断れるのは、力がある者だけだ」
グリモワールの足元には魔方陣が出現した。青白く光る魔方陣はグリモワールを照らし、それとともにグリモワールはノクスへと手をかざした。
「凍てつけ。ノクス」
凍り漬けにされたノクス。
指先すら動かせず、まばたきもできない。
「兵士たち。この女を牢に容れておけ」
そう兵士たちへいうと、グリモワールは偶然視界に入ったイージスを見るや微笑み、静かにその場を去っていく。
「アリシア先生」
「お前が言いたいことは分かる。だから一週間後の公開処刑の日、戦うぞ。グランたちと」
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
ノクスがグリモワールによって凍り漬けにされた現場を目撃した魔女教の一人ーーラビットは急いで教会へと走っていた。教会の扉を開け、勢い良く祈りを行っている最中の祭壇へ入った。
「おいラビット、何をしている」
儀式を取り仕切っていた男は力強い口調で言った。
「それどころじゃない。ノクスさんが……ノクスさんがグリモワールに捕らえられました」
「何だと!?」
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