第174話 魔女を嫌う者たち
「ここが……魔女狩りによって火炙りにされた魔女の処刑場……」
「ああ。ここが忌まわしき魔女を忘れ去ることのないように造られた場所だ。わざわざ大勢の人々の記憶に残るようにだ。本当に、意味のないことをするな。過去の人々は」
憤怒の視線を戒めの十字架へと向けるアリシア。今にも剣を抜き、暴れそうな雰囲気を漂わせている。
「イージス、この街で少し休息をとったらどこか広い場所で修行をしよう。今のお前に足りないものを教えてやる」
アリシアの後ろを歩くイージス。
自ずと周囲の目に恐怖を感じるものの、この島の人々はイージスたちを特別警視するわけでもなく、ただの通行人Aとしてしか見られていないことを感じ始めていた。
暗い心が少しずつ照らされていく中、イージスはある光景を目にした。鎖で腕を縛られた白装束を着た者たちが地面に引きずられつつ黒い修道着を着た男に連れられている様子であった。
彼らは警戒されているのか、周囲には鎧を纏い、剣を腰に差した兵士たちが囲んでいた。
イージスはその光景に衝動に駆られ、剣を構えて走りかかる。そのイージスの腕をアリシアは懸命に掴んだ。
「イージス、彼らはこれから魔女裁判へ連れていかれる。私たちが関わってはいけないことだ」
アリシアは至極真剣にイージスへ語りかける。
「魔女裁判、ですか?」
「この島にはかつて火炙りにされた魔女を崇拝する宗教がある。その組織の者たちの居場所を見つけては、あんな風に惨めな姿を晒させて裁判所へ連れていくんだ。それに私たちは関われない」
「ですがあれは酷すぎます。それにただ崇拝しているだけでしょ」
「ああ。崇拝しているだけだ」
力強い声でイージスへ言った。
「イージス、救いたい気持ちは分かる。それにお前を止めたところできっと行くのだろう。アニーが連れ去られた日も、戦龍と戦った日も、お前は迷うことなく進んだ。だが今は堪えてくれ」
「ですが……」
「頼む。戦うとしても、今じゃないんだ。今のお前では、
「あいつら?」
「お前も既に戦っているはずだ。五神に使える十六司教の一人、マレウス=マレフィカルム、そしてグラン=グリモワール」
その名を耳にしたことがあるイージスは、剣を納めた。
桃神村、そこを襲った者たちだ。
「分かった。今は戦わない。だが、僕は彼らを救う」
「ああ。それには同感だ。だが今は、その時ではない」
イージスは渋々広場から立ち去った。
怪しい行動をしていた二人を、一人の男は見逃さなかった。
「あの少年、確か五神様が警戒していた人物だった気が……。なぜこの島に」
男は魔道書を閉じ、少年の後を追いかける。だがその前に一人の女性が立ちはだかる。
「グラン=グリモワール、また仲間たちを捕まえたか」
「またお前か。ノクス」
「私は魔女教修道騎士、ノクス=リコリス。グラン=グリモワール、忌まわしき魔女狩りを受け継ぎし者よ。今ここでお前を撃つ」
ノクスは二本の剣を握り、魔道書を持つグランへと斬りかかった。
「魔女狩りを受け継ぎし者か。これまた、大層な異名をつけられたものだな」
グランの脳裏にはある記憶が思い出された。
「魔女狩り……。ああ、俺が魔女狩りを受け継きしグラン=グリモワール。お前に俺は倒せない」
昼間の屋根の上、魔法は火花を上げる。
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