第167話 スパイシー

 アリシア=コウマ、そしてカーマ=インドラ。

 二人ともイージスがお世話になった恩人であった。


「どうして先生たちが……」


「ノーレンス理事長の千里眼、それで君たちの居場所を突き止めてもらった。そしたらまさか、暗黒島の悪魔と戦っているなんてな」


 負傷している彼らを見て、カーマは魔法を詠唱する。輝く光がカーマを中心に円形に広がり、その範囲内にいるイージスたちの傷は治っていく。

 ミエドとの戦いがまるで嘘だったかのようだ。


「先生、僕たちは何と言われようと学園へは戻りません」


 イージスの頑なな眼差しを見るや、カーマは言った。


「まあ君たちが学園を辞める理由は分からなくもない」


「では、」


「だからこそ、私たちが来た」


 アリシアの背後から数名のヴァルハラ学園の教師が現れた。

 スナイプ=ハンターやエスト=クロニクル、サウス=キャットハニーなど、イージスと関わりのある多くの人物がこの島へと来ていた。


「五神の復活、それによって起きた多くの島の支配が始まっている。イージス、お前はそれに巻き込まれてしまった。それもこれも全て、〈魔法師〉が関わっているとノーレンス理事長は言っていた」


「〈魔法師〉が……。やはりそうだったのか」


 イージスは何か分かっているようだった。

 アリシアはそれを視界に捉えつつ、話を続けた。


「これより私たちは五神のいる五神島へと向かう……わけなのだが、どうやら他に何かやることがあるようだな」


「ああ。アリシア先生から貰った《夕焼けの剣》、それを何者かに奪われた。だから取り返しに行く。あの神殿に、その剣がある」


「そうか。なら先に行くべきは五神島ではなかったな。まずはあの神殿に行くぞ、そして剣を奪還する」



 まだ朝が明けたばかり、日はまだ昇らない。

 神殿内部では、とある盗賊団が神殿内部にあった金銀財宝を仲間とともに回収していた。

 盗賊団の団長であるダイヤモンド=ルージュは、他九名の仲間を神殿内部の祭壇のある部屋に集めていた


「団長、なぜ我々を集めたのですか?」


「再会だ。ヴァルハラ学園の教師たちと」


 かつて起きたドラグーン遺跡での戦闘。

 ヴァルハラ学園の教師と盗賊団。


「さあ再戦と行こう。アタナシア、イージスは任せたぞ」


「了解だ」


 そう呟き、その少女は手に握っていた剣を悲哀な感情を交えて見つめていた。

 橙色に輝く剣、彼の手から離れてもなお未だ輝き続けるその剣に、アタナシアは今まで感じたことのない期待、を抱いていた。

 きっと彼なら、きっとあの少年ならば、きっと、きっと。


「さあ、返り討ちにしようか。あの時の借りを返そうじゃないか」

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