第164話 やっと会えたね
どういうわけか、盗まれた剣は壁の向こう側にあるらしい。
なぜかは分からない、だが壁の向こう側にあるのだから行くしかなかった。だがどうやって壁の向こうへ行くか。
海も氷の壁で覆われ、さらには雲を突き破るほどに壁は大きく存在していた。どう考えても壁の向こう側に行けるはずはない。
「どうしたものか……」
イージスは壁を見上げていた。
(アニーの転移魔法があれば……)
イージスは壁に触れ、熱を放つ。だが壁は溶けず、微塵も薄くはなっていなかった。
立ち止まるイージス、その少年の前に彼女らは現れた。
「イージス、久しぶりだね」
聞き覚えのある声に、イージスは振り返った。
そこにいたのは、かつて歩みを共にした者たちーーイスター、クイーン、スカレア、ブック、スタンプ、ピット、ヒーリシア
「どうして……お前たちが!?学校はどうしたんだよ」
どうして彼らがここにいるのか、イージスは目の前の光景に疑っていた。
彼らがここに来る必要性はない、だからこそイージスはどうして彼らがここへいるのか、それに疑問を抱いた。だがその理由は彼らにとっては些細な動機であった。
「学校?そんなもの、辞めてきちゃった」
「イージス。私たちは気づいたんだよ。どこで何をするかじゃない。一番重要なのは誰といるかなんだって。だからイージス、私たちも手伝いたい。アニーを救うのを」
彼らの目は皆真っ直ぐであった。
真剣な眼差し、嘘偽りない表情、少年は信じた。そして気付いた。
彼の心にはアニーだけじゃない、彼らもいたのだと。
「すまない、皆」
イージスは深々と頭を下げた。
これまでそばにいてくれた彼らを裏切った、だからこそ彼は頭を下げた。
これが彼の返せるほんの小さなお詫びであった。その姿を見るや、皆はイージスのもとへと歩み寄る。
「大丈夫だよ、イージス。これからは一緒だよ。もう、離さないんだから」
クイーンはそう言い、イージスへ抱きついた。
クイーンの目には涙が浮かんでいるも、それを隠すようにイージスへ抱きついている。イージスはそれに気付きつつも、気付かないふりをしている。
「ありがとな、クイーン。お前と会えて良かったよ」
「もう、闇堕ちなんかしないでよね。私はもう、君が一人で苦しんでいるのを見たくないから」
「ああ。分かった。もう一人で抱え込んだりはしない、僕は弱いから。大好きな大好きな、お前たちに頼りたい。だからそばにいさせてくれ」
懐かしいイージスの優しさに触れ、クイーンは喜びから涙を堪えずにはいられなかった。
何年ぶりかの再会に、喜びを、それ以上の何かを得ていた。
「おかえり、イージス」
「ただいま」
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