五神島夜戦
第158話 真夜中の襲撃者
空を覆うは晴天ではない、今空を覆っているのは常闇に映し出された漆黒色の暗雲。まるでこれから災厄が起こるとでも暗示しているように、怪しげな雰囲気が漂っている。
激しく奏でられた雷の音、そして降り始めた雨、リーフ村にいたリーフは、今日の空を静かに見守っていた。
「リーフさん、どうかされたのですか?」
「何でもないよ、ゼウ。早く寝よう。明日は朝早くから仕事があるからね」
「うん」
記憶を失った少年、ゼウへとそう呼び掛け、リーフは眠りについた。
風も強く、嵐のようなその日、五神島では一人の女性が玉座に座り、二人の魔法使いを呼び出していた。
「スーウェン様、どうかされましたか?」
「いや、確か君たちは先日、桃神村へ奇襲を仕掛けたはずさね」
「はい……」」
「だが、一人の司教は行方不明で、ノコノコと帰ってきたということか。それに桃神村に封印されている私の力の結晶も持ち帰ってこれず、失態を犯したというのは分かるな?」
玉座に座る彼女の威圧に、二人の魔法使いーーグラン=グリモワール、マレウス=マルフィカルムは冷や汗をこぼし、何をされるかとひやひやしていた。
彼女はーースーウェンは立ち上がり、膝まづく二人の前で足を止めた。
「まあ名士四十一魔法師がいたのだから仕方がない。それに既にクロックも討たれている。だから君たちには頼みごとをしたいさね」
スーウェンは凶器の笑みをこぼしつつ、二人へ言った。
「これは私の個人的な頼みごとだ。だから極秘で依頼したい。良いな?」
二人はただ頷くことしかできなかった。
スーウェンは笑みをこぼし、そして頼みごとの内容を二人へと話した。それを聞いた二人は顔を見合わせて戸惑ったが、逆らうことはできない。
だから静かに首を縦に振る。
「それでこそ神に仕えるべき司教さね。ありがとう、グラン、マレウス」
スーウェンは何か企んでいるのか、だがそれは誰にも話しはしない。
彼女の目的は一体ーー
不敵に微笑むスーウェン、彼女がいる玉座へ、一人の司教が足早に走ってきた。
「どうしたさね?ロイ」
相当慌てているのか、彼ーーロイ=フーは動揺を表に出していた。
「緊急事態です。現在この島が襲撃されています。ヴァーミリオン=ステラが何とか食い止めていますが、突破されるのも時間の問題かと……」
「相手は、相手は誰なんだ?」
先ほどまで平然と装っていたスーウェンであったが、さすがの事態に動揺を隠しきれていない。
「襲撃者の正体はーー鬼です」
「何で……この最悪のタイミングでさね……」
まだ力を取り戻せていないスーウェンたち五神。
戸惑うスーウェンであったが、彼女は他の五神へ状況を伝えようと玉座の奥へと足を進めるが、その前に一人の鬼、いや、半鬼が立ちはだかった。
「おいおい。私をおいてどこへ行くつもりだい?スーウェン」
「邪魔さね、お前は。女冥」
そこには刀を握る女冥がいた。
彼女は先ほどスーウェンが浮かべていたように、不敵な笑みを浮かべてみせた。
危機的状況に陥ったスーウェンは、怒りと動揺にのまれていた。
「全く、面倒さね。だが神が、信仰してくれている者たちの前で負けることなど許されないさね。ったく、仕方ない。グラン、マレウス、あの話は今はいい。この状況下で生き残れたのなら、また後で話をしよう」
スーウェンの背後には青い鱗を有する龍が出現する。その龍はスーウェンの中へと飲み込まれていく。
「憑依ーー青龍」
スーウェンの体は青い鱗に覆われ、腰からは尻尾が生えてくる。手から生える鉤爪は鋭く、そして鋭利なものであった。
「さあ、始めようか。決闘ってやつを」
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