第157話 神と鬼と人の戦い、その予兆
あれから一ヶ月ほどが経過した。
だが何かが起こるわけでもなく、ただ穏やかな毎日だけが静かに流れていた。
桃神村で時を過ごしていたアーラシュは、六芒星の仲間とイージスを集めた。
「この一ヶ月、五神や鬼について調査をしていたんだが、分かったことがいくつかある」
この一ヶ月、アーラシュは時々村からいなくなっていた。
それに気づいていた彼らは、それについて調べていたのかと理解した。
「五神、彼女らは本来三百年前の巨大な戦争で先代魔法聖により倒されたはずの存在なんだ。だがしかし、どういうわけか彼女らは蘇っている。つまり誰かが意図的に彼女らを蘇らせた可能性がある」
「意図的に……」
何かが五神の裏には存在しているのではないか、その疑念を彼らは抱いていた。
明らかに誰かが復活させた、それ以外にあり得ないのだろう。だからアーラシュは多分やもしかしたらなどという曖昧な言葉は使っていない。
意図的であることは確信しているから。
裏には一体誰がいるのか、それは一ヶ月調べていたアーラシュでさえも分からないことであった。
心当たりのある者は誰もいない、ただ一人をおいては。
「イージス、どうかしたのか?」
「いや、少しタイミングが良すぎると思ってな」
「タイミング?一体何のことだ?」
考え込むイージスを、アーラシュは不思議そうに見つめている。
「なあ、やはり五神を生き返らせるとなるとそれ相当の膨大な魔力が必要だよな」
「ああ。それは当然だ。でなければ、人一人生き返らせることはできないはずだ」
「なるほど」
抱きつつあった疑念が本物に変わりつつあるその状況に、イージスは少しばかり信じつつあった。
もしかしたら、いや、もしかすれば……。
「五神が生き返った場所はどこか分かっているのか?」
「ああ。それは今現在五神が占領している島、そこで生き返ったとみるのが妥当だろう」
「なるほど……」
「何か分かったのか?」
「いや、後で話す。今は調べてきた情報を話してくれ」
戸惑いつつも、アーラシュは話を続ける。
「鬼が住んでいる場所は鬼ヶ島と呼ばれる場所で、彼ら鬼は五神の復活とともに活動を活発化させている。その主な原因としては、鉱石諸島を五神が乗っ取ろうとしていることだ。鉱石諸島には無数の鉱石が眠り、その鉱石を使えば金は十分に集まる。恐らく仲間を集めようとしている」
鉱石諸島に眠る鉱石は数えきれないほどだ。
永遠と湧き続けるのではないかという疑念すらも抱かせるように採っても採っても鉱石は生え続ける。
しかもその場所には珍しい鉱石も時々生えてきており、採掘士にとっては絶好の場所だ。だがその諸島は数年前に鬼によって占拠されている。
それが五神の出現により、鉱石諸島の奪い合いが始まろうとしている。
「その争いはもう始まっているのか?」
「ああ。時々衝突しているらしい。それにこの一ヶ月で三回ほど衝突している。このまま放っておけば自然消滅してくれるだろうが、手を組むという自体になる可能性も十分ある。だから彼らが争っている内に、我々は五神に占領された島を奪還する。そして五神を再び倒す」
アーラシュは少し震えつつも、今しかないと思っているのか、そう皆へ告げた。
当然六芒星の者たちはついていくと真っ先に立ち上がった。イージスはリーフ村へ一瞬視線を移しつつも、何か企んでいるのか、淡い期待を抱きつつ立ち上がった。
「だがアーラシュ、どうやって五神を倒すんだ?」
「それなら大丈夫だ。恐らく今は五神は力を取り戻していない。あの程度の強さなら十分に勝てる。それに保険として、一人名士四十一魔法師からの協力を得た。彼女はすぐ近くの島で暮らしているから、すぐに駆けつけてくれるはずだ。つまり、今しかない。五神が弱っている内に、彼らを倒す」
これより始まる五神とアーラシュたちの戦い。
だがその裏で密かに暗躍している者に、今は一人の少年しか気づけないでいた。
「待っていろ。アニー」
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