第154話 絡み合う思惑

 鬼が去った後、アーラシュは六芒星の仲間を半壊している家屋の中で看病していた。命に別状はなく、特に重症も負っていなかった。

 既に皆は傷が痛みはするも歩いたり走ったりもできていた。


「アーラシュ、申し訳ありません。」


「いや。謝る必要はない。どうしてこの村を攻めてきたのか、それだけが分からない。ここには何かがあるわけではないというのに……」


 考え込むアーラシュへ、たまたま通りかかったストロベリーは近寄って来て言った。


「奴らの目的はこの村ではない。たまたま通りかかったからこの村を壊しただけで、あいつらの真の目的はこの村を越えた先にある村ーーリーフ村さ」


「リーフ村?そこに行って何が目的なんだ」


「そこにはモンスターを操る少女がいる。その少女を自らの者にしようとしている」


 イージスは何か聞き覚えがあるのか、記憶の中はもやもやしていた。

 リーフ村、モンスターを操る少女、それだけでも十分一致する人物を思い浮かべていた。


「アーラシュ、僕は今からリーフ村に行ってくる。多分……そこには知り合いがいる」


「俺はまた来るかもしれない鬼に備えるためここに残るが、それでも良いか?」


「ああ。一人で十分だ」


 イージスはそう言い、その村から去っていく。

 そこに彼女がいるという確信はない。だがそこにいないという可能性の方が低いだろう。

 イージスはその歩みを進め、向かった先はリーフ村、の一つ前の村。


「闇裂村、懐かしいな」


 イージスはその村に入りはしなかったものの、その村を見て感慨に耽っていた。

 懐かしさが漂うその村の面影は変わっておらず、村の人々も皆元気な姿を見せていた。


「さて、リーフ村へ向かおう」


 見慣れた崖、そこを通ってリーフ村へと向かう。その道中でモンスターが来ても良いように、イージスは〈超感察ステイタス〉という魔法を使い、気配を感じ取っていた。

 そして崖の道をわたっていた最中、崖上には見覚えのある銀色の狼が遠吠えをしていた。その狼の背中には、一人の少女が座っていた。


「久しぶりだな。イージス」


「ああ。一年ぶりくらいだな。リーフ」


 一年ぶりに再会したリーフとイージス。

 二人は笑みを交わし、過去に浸った。

 かつて戦いを共にした少女と少年の、激しい戦い。その戦いを思い出しながら、二人は出会った。



 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



 五神島。

 そこには現在十五人の魔法使いが集められていた。十五人の魔法使いを前に、五つある玉座の内の真ん中に座る一人の女性は冷徹にも言い放った。


「昨夜、一人の魔法使いによって西南西司教、クロック=クロノスタシスが倒された。さらには突如現れたもう一人の魔法使いにより、黄竜は討たれ、私も大きな傷を受けた」


 それを聞くと数名の魔法使いは驚いた。


「だがしかし、集まりつつある力の欠片により、我々は力を取り戻しつつある。じきに彼らはこの島に来る。だから君たちには、彼らを童話島で殺してくれ。私たちの計画を彼ら程度の魔法使いに邪魔されるわけにはいかない」


「"例の少女"についてはどうされますか?」


「魔法聖に計画がバレるのも時間の問題だ。最優先事項は"例の少女"の誘拐、頼んだぞ。十六司教」

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