童話島編
第151話 旅の前触れ
遠ざかる一人の少年の背中を追いかけ、アーラシュは空を飛んでいた。
「なあ少年、ペルシャから聞いたぞ。クロックを倒してくれたんだってな」
アーラシュの言葉に耳を傾けたのは、イージス=アーサー。迷い人だ。
彼の話を聞いたイージスは、ふと疑問に思った。クロックと戦った際、ペルシャはマレーシャの家で休息をとっていたはずだ。つまり彼女がクロックを倒した瞬間を見れるはずがない。
そこでイージスは憶測を立てた。
ペルシャは憎むべき対象である魔法使いの自分にクロックを倒せと、そう頼んできた。その時の彼女の目は今にも泣きそうで、騙されていたことに酷く胸を打たれているようだった。
だからきっと、彼女は見ていなくても良かったんだ。この少年なら、きっと勝ってくれると分かっていたから。
「確かにクロックを倒したのは僕だ。だがあの謎の竜を一瞬で倒すなんて、さすがに驚いたぞ」
「黄竜はしばらく封印されていたからな、だから力の一割しか出せていなかったんだよ。それでも十分に勝機は薄かった。だが想像以上に黄竜は弱っていた。だから偶然勝てただけだよ」
謙遜しているのか、控えめなアーラシュ。
「なあ少年、これから用事でもあるのかい?」
「いや。僕はさ迷い人だ。これから行く先なんて自分でも分かりません」
虚ろな瞳のイージスを見て、アーラシュは彼がどんな経験をしたのか大まかなことを察した。
長く彼の顔を見ていたアーラシュは、イージスのことを思い出した。
魔法船での出来事、なぜ彼が今ここにおり、そしてなぜこんなにも大罪を背負ったような目をしているのか理解できた。
「なあイージス、君がどんな旅をするのか気になった。私もついていって良いか?」
「そうですね。断る理由はありません。ですがその代わり、絶対に死なないでくださいね」
「安心しろ。俺は名士四十一魔法師の一人だ。そう簡単には死なないよ」
こうして、二人の旅が始まった。
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