第142話 また救われた、
次の日。
大規模な捜索隊が森の中を歩き回っていた。それほどまでに魔法も魔法が使える魔法使いも大嫌いということなのだろう。
イージスとスフィアはローブを着、フードを深く被って顔を隠して街へと向かっていた。
「なあスフィア。魔法を好きにさせる方法なんてあるのかよ」
「まだ分からない。けど、何かしら方法はあるはずだから、街の人の会話を盗み聞きして何とか探ってみる」
「とは言ってもな……」
イージスはあまり乗り気ではなかった。
だがそれでもスフィアとともに街を徘徊し、人々の会話を盗み聞いていた。だが一向に手がかりはつかめないまま。
二人は路地の裏で壁に背をついて休息をとりつつ、会話を交わしていた。
「なあスフィア。いい加減諦めないか?」
「駄目だよ。何としてでもこの島の人々が魔法を好きになってくれるように頑張らないと」
「だったら魔法で特技でも披露すれば良いんじゃないか?」
「アホか。この島に来た時お前も見ただろ。この島には魔法など使わなくとも魔法使いを倒せる存在がいる」
イージスの脳裏には思い出された。
この島へ来た際、イージスには矢が飛んできた。恐らくその者のことを言っているのだろうと確信した。
「彼女はどこからであろうと風の流れを読み、魔法なしで魔法使いを追い払ってきた。いわばこの島の守り神。それに彼女はこの島で最も魔法が嫌いなんだ」
スフィアはそのことについて語り始めた。
「彼女の名はペルシャ=ビェ。彼女には名士四十一魔法師である兄がいる。つまりは魔法使いだ。詳しい話は知らないが、兄が魔法使いになって島を出てから、彼女は変わった。今の無慈悲な彼女が生まれたのは、それ故だ」
「そんな話が……」
イージスはしばらく口を開かなかった。
スフィアは一度イージスへと視線を向けた。その表情を見て何を思ったか、スフィアは絞り出した息を吐き出した。
「君が何か心配する必要はない。それにこの島の人々が魔法を好きになれば良いだけの話だ。そう深く考える必要はないさ」
そう呟くと、スフィアは路地裏から去ろうと足を進めた。その一歩を踏み出した途端、矢が足元ギリギリに刺さった。
「まさか……」
「ようやく見つけたよ。魔法使い」
数秒後、無数の矢がスフィアたちの居場所を気づいたように矢を放つ。
矢を放っているのはペルシャだけではない。この島にいる兵も皆矢を放っている。それにーー
細い脇道へとスフィアがイージスを連れて入る。だが待ち伏せていたように、鉄の兜に鎧を来た兵が剣を持って斬りかかる。
(もっと前から居場所が割れていたか……)
スフィアはイージスの腕を取ると、咄嗟に氷でほうきを創り、そして海の方へと飛んでいく。だがペルシャはそれを逃がさない。
一発の矢が放たれ、氷のほうきへと直撃した。ほうきは砕け、スフィアとイージスは街へと落ちた。だがその下には兵がいる。
「イージス。必ず私を救い出せよ」
そう言うと、スフィアはイージスの腹へと手をかざすと、風圧によって吹き飛んでとある民家の屋根を突き破って床に転がった。
「スフィア……お前……」
イージスの脳裏にはまた魔法船での出来事が思い出されていた。
あの戦いで彼は己の弱さを知った。だからこそ、彼はスフィアを救い出そうと走るーーが、体が思うように動かない。
その頃スフィアは地面へと落下し、無数の兵に取り押さえられ、地面に顔を押し付けられて身動きを取れなくされていた。
魔法で抵抗しようにも、それでは魔法をさらに嫌いになられてしまう。だからこそスフィアは抵抗できずにおとなしく捕まっていた。
兵たちに捕まったスフィアは、イージスを吹き飛ばした方向を見ていた。
(しばらく痺れていろよ。イージス)
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