第127話 スカーレットVSサー
『会場:山岳
スカーレット=ナイトメアVSサー=ヴァント』
巨大な山が連なるその会場。森などが生い茂り、崖などがあり足場は少し悪い。そんな山々の中で、スカーレットは走り回っていた。
一風の斬撃が空を切り、スカーレットの頭上を斬り裂いた。彼女の前方にあった木々は全て消失し、スカーレットは咄嗟に振り返って剣を構えた。
スカーレットの向く方向には、天使が剣を振り下ろしている体勢が目に映った。
「結構距離をとったはずなのに……これほどの威力……」
スカーレットは距離をとろうと無駄だと確信した。距離をとれば自分が不利になるとそう理解した。そんなことはもっと前から理解している。だがしかし、スカーレットはサーに近づけない。
スカーレットが動けばサーも距離をとるために動いている。そのせいか、スカーレットはサーとの距離を縮めることはできずにいる。
(このまま高火力の攻撃を撃たれたままでは……)
と考えている間にも、宙を切断する一撃がスカーレットへと飛んできていた。剣で弾いて風の斬撃を破壊するも、破裂する際の暴風にスカーレットは吹き飛ばされる。
(強い……、仕方ないが、この策を使うしかないか)
スカーレットへと攻撃を仕掛ける大天使。その足下で腕を組む男ーーサーは木に寄りかかってスカーレットが倒れるのを待っていた。だが一向にスカーレットを倒せない。
「仕方ないか。大魔法を使ってくれ」
サーが天使へそう呼び掛けると、天使は持っていた巨大な剣を天へと振るう。その剣には転から光が差し込むようにして輝きを放ち、天使は勢いよくその剣を振るった。
「ゲームオーバー。スカーレット」
天使は剣を振り下ろした。その振動にこだましてか、巨大な風の斬撃が山一つを丸々破壊した。直撃していようといまいと、ほぼ即死。
だがもしそれに察知してその山から出ているのなら、当たっているかは不明であるが……。
試合は終わらない。サーは大きくため息を吐いた。
「読んでいたか……」
落ち込むサーの視界にはさらに悲惨な光景が映った。
山々に映える草花や木々、それらは突如燃え始めた。その火はいつの間にか山岳全てを覆い、サーのいる山も火で囲まれている。
「スカーレット。少しは楽しませてくれるじゃないか」
サーの背後、隙のある背へと、スカーレットは剣を振り下ろす。だがそれを天使は阻止する。
「やはりそう来るか」
「危ない。既に背後に回られていたか」
「私はこれまで勝ち抜いて来たんだ。だからここで、負けられないんだ」
スカーレットは力強く剣で天使へと攻撃を仕掛けるも、圧倒的守りにスカーレットは手も足も出ない。
天使と交戦中のスカーレットへ、サーは手をかざした。風が吹き荒れ、スカーレットは体勢を崩した。そこへ、天使は剣を振り下ろす。
「これで終わりかーー」
「ーーまだだぁぁぁあああ」
天使が斬ったのは幻影。魔法で創っただけのただの偽物。
それに気づいたのが遅かった。火炎の中をかき分け、スカーレットは剣を振るって無防備なサーへと斬りかかる。
最初からスカーレットは計算していた。真っ向から挑めば全て天使に攻撃を阻まれて迂闊に攻撃をできないと。だからスカーレットは分身に攻撃をさせ、その隙にサーを突く。
読みきれていなかったか、サーは足を踏み外して体勢を崩した。そこへ、スカーレットは剣を振るう。
「はあぁぁああああ」
剣はサーを斬り裂くーー寸前で天使は光の盾を創造し、スカーレットの剣を防いだ。
「無駄だ」
スカーレットの剣は熱く、そして激しく燃え上がり、光の盾をいとも容易く破壊した。そして剣はサーへと一直線に進む。そして剣はサーを斬ったーーかに見えた。だがスカーレットが斬ったのは天使の方だった。
驚くスカーレット。天使がいたはずの場所を見ると、そこにはサーがなぜかいた。
「場所を……入れ換えた!?」
「最後までとっておこうと思ったけれど、そう簡単にはいかないよな」
強く剣を振るいすぎたせいか、スカーレットには大きな隙ができていた。その隙を狙い、サーは剣を創造し、スカーレットへと振り下ろした。
ーー試合終了ーー
この試合は、サーの勝利をもって幕を閉じた。
スカーレットは空を見て、そして大きくため息を吐いた。
「そうか……。まだ私は……」
スカーレットは剣をしまった。そして強く拳を握り、誓った。
「次は勝つ」
「待っているぞ。スカーレット」
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