第126話 アニーVSメリー

『会場:雪原

 アニーVSメリー=クリスマスイブ』


 メリーは負けられない理由があった。それ故、彼女は真剣な表情でアニーを見ていた。これから戦う相手を、威嚇するように。

 心臓が激しく音を奏でるメリーは、大きく深呼吸をして息を整えた。


(もう大丈夫。この試合は、私が勝つ)


 メリーは真っ直ぐにアニーを見つめ、両手をかざした。


「始め」


 開始の合図だ。

 その瞬間、メリーはいきなり最大威力の氷結を発動した。まるで巨大な氷山が一瞬でできたかのように、そこにポツンと氷の一角が姿を現した。

 雪原は一瞬にして氷で覆われた。

 メリーは内心『勝った』と期待しつつも、まだ倒せていないと感じていた。その予想通り、氷には突如亀裂が走った。


「やはり倒せないか。この程度では」


 氷山の一角、そこに一人の女性は立っていた。


「さすがは『氷の魔女』と言われるだけはあるな。だがしかし、私を倒すにはこの程度の氷結は無意味だ」

「さあどうかな」


 メリーはアニーの周囲に氷の刃を無数に生成した。


「やれ」


 氷の刃はアニーへと降り注いだ。だがしかし、アニーは宙へと舞い上がって攻撃を回避した。その状態でメリーへと片手をかざした。


「〈白炎ホーヘンフレイム〉」


 白い火炎がアニーの手からは放たれた。メリーは咄嗟に回避するも、広範囲に広げられたその火炎をメリーは回避しきれず、左腕に火炎を受けた。


「回復」


 メリーは自分の左腕に手を当て、治癒を施していた。だがそんなことさせるはずもない。まだ宙へと体を浮かせているアニーはメリーへと両手をかざし、龍の形を成した火炎をメリーへと向けた。

 火属性原始魔法弐零〈火龍マーズ

 その魔法の威力は大きく、直撃すれば一撃で脱落するのは間違いないだろう。


「予想通り」


 そう呟き、メリーは微笑んだ。

 その笑みの意味を悟ってか、アニーは空中で体勢を崩した。そんな中で何とか振り向いた。その視線の先には、氷で創られたであろう巨大な隕石が空からアニーへ向けて降っていた。


「〈氷星ジースター〉」


 既に氷の隕石はすぐそこまで迫っていた。高速移動では避けられるはずもない。

 隕石はアニーが形成したであろう火炎の壁にぶつかるも、火炎を圧し、アニーが咄嗟に放った魔法で隕石にはひびがはいる。だが壊れない。そのままアニーは隕石に押し潰され、メリーの勝利……となるはずだった。


「危ない危ない」


 そう言いながら、アニーはメリーの背後へと現れた。


「避けたか」

「無論だ。あの程度の攻撃など、瞬間移動で避けられる」

「瞬間移動……。はっきり言って、その魔法を使うには相当な技術や才能が必要なはずだが、そんなにすんなりと使えるものか」

「言っていなかったな。なら教えておこう。私は魔法聖の一人、名は教えぬが、その者の子だよ。だから瞬間移動の魔法は幼い頃から十分に使えたさ」


 自慢げにアニーは言った。

 メリーは苦笑を浮かべつつ、両手をアニーへと向ける。だがメリーの背後から火炎の矢が放たれた。油断、そして動揺をしていたせいか、メリーはその矢を何本も受けてしまった。メリーは血反吐を吐き、地に足をつけた。


「人間が最も油断する瞬間はな、敵を倒したと確信した直後にその敵が現れること。つまりは今だったということだ」

「なるほどな……。まんまとやられたか」

「ああ。私の勝ちだ」


 アニーは火炎の隕石を出現させ、それをメリーへとぶつけた。隕石が直撃したメリーは倒れ、戦いは終わった。


「良い戦いだった。メリー」

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