第125話 キドウVSグラン

 十回戦。既に残っているのは八人のみとなった。


 多種多様なまほうで相手を翻弄ほんろうし、試合の多くを一方的な戦いで勝利した魔法使い、アニー。


 強力なまほうを生み出した男。だがしかし、多くの試合をその魔法を使わずに倒した魔法騎士、サー=ヴァント。


 圧倒的な威力の火炎を自由自在に操り、その火炎を使った剣術で次々と敵を倒した魔法剣士、スカーレット=ナイトメア。


 彼女が得意とするのは氷属性魔法。一年生でその魔法を使いこなす者は少ないながらも、その魔法を高威力で放ち、倒してきた魔法学者、メリー=クリスマスイブ。


 鬼のような男、金棒一本で敵を倒してきた魔法戦士、キドウ=ロクドウ。


 絶対的防御力、そして絶望的攻撃力を兼ね備えた魔法騎士、グラン=シャリオ。


 彼女の生み出す火炎はまるで生きている。その火炎を操り、従える魔法騎士、インフェルノ=ナイトメア。


 深海のごとく蒼い瞳はまるでどこかの種族のようだ。その瞳の有する彼女の魔法は美しく、見とれてしまうほどだ。彼女は魔法使い、スフィア=ラピスラズリ。



 そしてこれより、彼ら八人による激しい戦いが幕を開けることとなった。

 最初の試合、キドウ=ロクドウVSグラン=シャリオ。

 会場は『要塞跡』


 ここまで勝ち抜いてきた強者同士の戦い……になるはずだった。だがしかし、決着がつくまでに、それほどの時間がかかることはなかった。

 試合開始直後、一体何が起こったのだろうか?

 空から無数の隕石が落ち、それらはキドウをこてんぱんに潰した。キドウは防御壁を展開するも、防御壁は一瞬にして崩壊し、粉々に砕け落ちた。

 キドウは隕石の直撃を受け、たった一瞬にして敗北を期した。


「あ……圧勝です……。グラン選手の……圧勝です……」


 今までの試合通り、グランは一分もかけずに相手を倒した。その圧倒的攻撃力に、キドウは何が起きたのかを理解できていなかった。

 降り注ぐ無数の隕石、それを一瞬で出現させるほどの膨大な魔力、それほどの魔力があるのなら、この大会で負けることは万が一にもないだろう。

 キドウは敗北したことによる悔しさよりも、グランの恐ろしさに震えていた。


「……強い…………」


 グランはそそくさと会場を去り、静かに帰っていった。

 キドウは驚きのあまり、腰が上がらない。その試合を見ていた者たちも、一瞬過ぎる光景に目を見開いたまま固まった。


 彼の恐ろしすぎる、圧倒的な力に。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る