第124話 イージスVSスカーレット
「さあ、ここまで勝ち上がった選手たち。ではこれより三回戦を始めます。ここまで勝ち進んでいる選手たちは次の対戦表を見て、会場へと向かってください」
選手たちの魔法手帳に記される対戦表。その中に記されている名前の中には、イージス、アニー、スカーレット、サーやメリーなどの強豪たちの須賀田が見てとれる。
この戦いは十二回戦目で終了する。それまで勝ち進むのは誰なのか、そんな緊迫感の中、イージスの対戦相手は……
『会場:溶岩地帯
イージス=アーサーVSスカーレット』
マグマのように煮えたぎる溶岩が、会場を灼熱の焦土と化している。その上に立つ二人の魔法使いは、水魔法、対溶岩魔法によって自らの身を溶岩から守っていた。
そんな二人は向かい会うと、懐かしそうに頬を上げた。
「イージス。何年ぶりだ」
「一年ほどだな。スカーレット」
「ああ。出会いは最悪だったが、結果、お前に会えて良かったと思っているさ」
スカーレットは笑顔で剣を構えた。それに応え、イージスも剣を構える。
両者の剣は武者震いなのか激しく揺れ、周囲には並々ならない緊張感が漂っていた。
「では行くぞ」
「来い」
先に仕掛けたのはスカーレット。
天高く舞い上がり、剣を片手にイージスへと振り下ろした。イージスも負けじと剣に火炎を纏わせ、スカーレットの攻撃を受け止めた。激しい金属音が響き渡り、火花が激しく散る。
「『炎脚』」
スカーレットは剣を軸にイージスへと火炎を纏った足で蹴りをいれる。だがイージスはすぐさま盾を創造し、スカーレットの蹴りは防がれる。
(さすがはサンダー先輩と渡り合うだけはあるな)
剣と剣が何度もぶつかり合い、その度に激しい火花が周囲へ散る。何度も何度も金属音が響くとともに、イージスは体勢を後ろへと崩していった。
「『火炎一閃』」
その一瞬を見逃さなかったスカーレットは、自慢の剣を大きく振るってイージスを斬る。だが、手応えはない。まるで空を切るような感覚。
「残像!」
気づくのが少しばかり遅かった。背後から斬りかかる剣での一振りに、スカーレットは驚きつつ感嘆の声を漏らした。
「さすがだ……。イージス」
イージスの剣はスカーレットの体を斬る。だがその寸前、突如火山が爆発し、溶岩が降り注ぐ。
当然両者は驚いた。だがその噴火とともに激しい揺れが襲いかかり、イージスは寸前のところでしとめ損ねた。
「くそ……」
振り返った直後、巨大な溶岩がイージスを襲う。イージスは溶岩を斬り裂き、速く決着をつけようと再度振り返った瞬間、火炎の剣は振り下ろされた。
「私の勝ちだ」
スカーレットの剣に、イージスは宙へと舞って吹き飛んだ。
『敗北』それを今この瞬間に味わったイージスは、笑みをこぼして溶岩の上に倒れた。
両者が負った傷は完全に治り、倒れるイージスへスカーレットは静かに手を差し伸べた。
「イージス。噴火がなければ私は負けていたよ」
「いや。もっと速く剣を振るっていれば、あの一瞬が勝敗を決めたのだろう」
「でもイージスは強いよ。私の次にね」
スカーレットのジョークに、イージスは笑みをこぼしつつツっこんだ。
イージスはスカーレットの手を掴んで立ち上がるや、スカーレットの笑みを見ながら言った。
「一位は誰だ?」
「そんなの決まっている。私だろ」
二人は思わず腹を抱えて笑い合った。イージスは笑いすぎてこぼれた涙を拭いつつ、スカーレットへと言った。
「勝ってこい」
「ああ。あとは任せろ」
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