第116話 魔法陣取り戦Ⅲ

 スカーレットの前に現れたはカトー=イリノヤ。彼女は火炎を纏わせた剣を握り、スカーレットへ飛びかかった。


 カトーの剣を流すようにして受け止め、スカーレットはカトーと激戦を繰り広げていた。スカーレットの剣に纏われた火炎と、カトーの剣に纏われた火炎とがぶつかり合い、激しい熱を放っている。

 周囲の建物は焼け、火炎に包まれている。


(さすがに強いな。先輩というのは)


 スカーレットは苦戦しつつも、未だに余裕ではあった。楽々と剣を受け流し、勝者の憂鬱にでも浸っていたのだろう。

 カトーはそれに気づきつつも、本気で剣を振るってスカーレットと戦うも、勝てる予想がつかないほどに強く、カトーは何度もがむしゃらに剣を振るう。


「無駄だ。私を斬るのは君にはできない。君が私に戦いを挑むことに意味はないんじゃないか」

「勝てないと分かっているから戦わない?それじゃあ、何のために今まで頑張ってきたんだって話になるだろ。私はもう後悔したくないんだよ。だからここから逃げたくないんだ」

「逃げたくない……か」


 スカーレットはかつての自分を思いだし、小さく笑った。


「全力で来い。全力で向かい撃つから」

「ああ。最初からそのつもりだ」


 カトーは剣を降り下げた。だがそれを見抜き、スカーレットはその直前に剣を振り上げ、カトーを吹き飛ばした。


「私の勝ちだ。良い勝負だったよ。カトー=イリノヤ」


 スカーレットは剣を鞘に収め、魔法通信機で仲間と連絡を取り合う。が、しかし、


「東……壊滅状態です……」

「西は……全陣を相手に奪われました」

「こちら南、苦戦状態。このまま陣を保てるか……」

「北にはあまり敵はいない。だが……陣は一つもありませんでした……」


 スカーレットは驚き、カトーへと視線を向けた。


「そうか、そういうことか。私をここで抑え込み、その間に他の陣を奪い取った、なるほどな。お前ら、やってくれたな」


 制限時間が終わり、長いようで短かった戦いには幕が下ろされた。結果がモニターに表示され、参加者たちの視線は皆モニターに集中していた。


『結果

 名門ヴァルハラ学園、獲得陣地5つ

 都立ホーヘン学園、獲得陣地2つ』


「勝者、ヴァルハラ学園」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る